
■「レトロですね」
JR静岡駅から車で1時間、安倍川上流の葵区玉川地区にある茶農家「志田島園」。7代目園主の佐藤誠洋さん(35)は3月、訪日客8組を茶畑に案内した。最近は自前の見学ツアーも実施。レンタカーに乗り、予告なく茶工場を訪れた白人の家族連れなどにも「余裕があればできるだけ対応している」と苦笑する。
「店の歴史を聞かれ『レトロですね』と褒めてもらうこともある」。そう顔をほころばせるのは、静岡浅間神社近くの「静岡おでん おがわ」の小川光枝さん(74)だ。ここ1~2年は創業77年の歴史の中で外国人客が最も多いという。
訪日客に詳しい静岡経済研究所調査部の岩本真弥調査グループ長は「(クルーズ船の乗客に特に多い欧米系の訪日客の中には)日本の文化や生活様式に関心を持っている人は多い。われわれが気付かないことも魅力に映ることがある」と分析する。
■足延ばすクルーズ欧米客
清水港は最近10年間でクルーズ船の寄港が6倍以上増加した。2025年度は過去最多の約110隻が訪れる予定。船内でツアーごとにフェイスブックのグループができ、乗客同士が訪問先のおすすめを自由に情報交換しているという。
市中心部の呉服町通りにある商店街の刃物店や雑貨店も、近年では訪日客が多く訪れる人気観光スポットになっているようだ。
包丁などを販売する1924年創業の「刃物の政豊」は、すでに売り上げの2割以上が訪日客。28日午前に訪れたドイツ人観光客のリザさん(35)は刺し身包丁1本と文化包丁1本を購入。沼田千晴社長(57)は「皆、鋼材の種類などよく調べて買いに来る」と舌を巻く。公認会計士で雑貨店「三保原屋」社長の堀高輔さん(38)は「店や商品のルーツを聞かれることが多い。ずっと商店街で店を出してきた伝統や歴史が強みになっている。ビジネスチャンスを訪日客に気付かせてもらっている」と話す。
■清水港の船客 実態調査へ
静岡市や地元企業などでつくる「清水港客船誘致委員会」は5月に計3回、国際クルーズ船の乗客が寄港した後の立ち寄り先を調査する。乗客に台紙代わりの富士山柄のハンカチを渡し、市内9カ所を巡ってもらうスタンプラリーを検討。立ち寄り先のデータを分析し、モデルコースの提案につなげるとしている。
中心市街地「おまち」の活性化を推進する「I Love しずおか協議会」でインバウンド部会長を務める杉沢恒静岡鉄道取締役は「訪日客の訪問先は日本人が『こうであろう』というものではない。今後、同様の調査があれば協力していく」などとした。