
県内の近年の公立高生徒数は右肩下がりで、25年度全日制入学者選抜では90校162科(分校含む)のうち34校44科が定員割れだった。県教委は少子化や私立で進めた授業料減免制度の拡充が背景にあるとし、高校教育課の小須賀拓也参事は「無償化となれば、公立志願者が減少する可能性は十分にある」。県教委は、県内を11地区に分けて適正規模などを含めた公立の在り方を検討し、24年度からは各校の特色を高める「行きたい学校づくり」事業も進めるさなか、「問題意識を強く持つ必要がある」と気を引き締める。
私立の授業料減免は、国の就学支援金に県独自補助を上乗せし、24年度までに対象を世帯年収850万円未満に拡大した。既に私立生の8割が恩恵を受けていることから、静岡大の島田桂吾准教授(教育行政)は「静岡県で無償化を享受するのは高所得世帯」と強調する。「施設やデジタル環境などで私立が勝るだけに、公立はそれぞれの活動を見直し、教育の質の優位性をどう伝えていくかが試される」と指摘。無償化により浮くことになる私立生に対する県独自補助分の約18億円について「この財源がどう活用されるか」と注視する。
今後私立が授業料を値上げする可能性に関し、石破茂首相は今国会の答弁で「あっていいとは思わない」とくぎを刺した。県私学振興課には、2月下旬に自民、公明、日本維新の会の3党が合意した翌日に「値上げを検討したい」との問い合わせがあったという。渡辺宏課長は「昨今の物価高騰でやむを得ない場合もあるだろうが、丁寧な説明が必要になる」と述べ、同課は状況に応じて注意喚起するとしている。
■高校授業料の無償化
国は2025年度から公立、私立問わず年11万8800円の就学支援金の所得制限を撤廃し公立を実質無償化する。26年度からは、私立に加算されている支援金についても所得制限を撤廃し、上限額を私立授業料の全国平均45万7千円に引き上げる方針。