
3月上旬、県護国神社。武田さんが2月にお披露目されたピアノの様子を見に訪れていた。設置以来、多くの参拝者が思い思いの音を奏で、境内にメロディーを響かせているアップライトピアノ。「参拝者の良い思い出になってほしい」と同神社権禰宜(ごんねぎ)の谷田和悠さん(38)。武田さんとともに目を細めて演奏を見守った。
武田さんは焼津水産高を卒業して航海士として働いた後、26歳で登山家に転身した。だが、2019年に目標だった山の登頂に失敗し「燃え尽きた」。コロナ禍もあり、先を見失っていた中でなんとなく始めたのがピアノだった。魅力に次第にのめり込む中、清水駅前銀座商店街(同市清水区)のストリートピアノで演奏した。曲が終わると聞いていた子どもが拍手してくれた。「ストリートピアノで地域との交流を生むことができる」。手応えを感じ、再び働き始めた航海士の本業の傍らストリートピアノの普及活動を始めた。
今後の目標として武田さんは「設置済みのストリートピアノと合わせ、ストリートピアノで中部地区や県全体をつないでいきたい。著名なピアニストも呼んでいけたら」と意気込む。