
前節のアウェー山口戦は苦しみながらも終盤の逆転劇。勝ち点3を獲得しただけでなく、チームの気運を高める大きな勝利となった。最終的には後半のアディショナルタイム6分に、金子大毅が大仕事をやってのけたが、象徴的だったのが、途中出場組の存在感だ。後半18分に3枚替えで、川﨑一輝、井上潮音とともに投入された角昂志郎は元来アタッカーだが、それまで本職の上原力也が担っていた守備のタスクを最低限こなしながら、攻撃でリズムを変えたり、違いを作る役割を果たした。
金子のゴールに繋がった相手のクリアミスも「ヘディングするのは分かってたので。とりあえずセカンドボールを自分がほぼ確で拾えるだろうなって思ってたら、まさかペイ(マテウス・ペイショット)の方に行ったので。自分のところにこぼれてくる準備はできてました」と語るように、味方からのロングボールに対して、しっかりとプレッシャーをかけた結果だ。

角は「最初から出ている選手が本当に100%でやってくれていたおかげで、自分たちが入った時にやりやすい状態が作られているというか。自分たちがうまく試合に入れないということがないぐらいの状況を作ってくれている」と前置きしながら「すごく自分に課せられた役割が分かりやすいというか。もちろん、スタメンで出たいという気持ちはありつつも、今まで以上にサブの力が試されてると思います」と語り、途中出場もポジティブに捉えている。
「常に90分をイメージしてプランを立てられなければ、プロの監督ではない」というのが安間監督のモットーだ。この2試合で3-5-2をベースに構成しているスタメンの選手には試合を作っていく役割が求められるが、状況に応じて安間監督がどのタイミングで、どの選手をどこに投入するのかで、試合に少なからず影響が出てくる。

もちろん理想は前半からリードを奪ってゲームをコントロールしていく流れだが、安間監督は「0-0の時間を嫌がらない」戦いを勝利のための基本マインドとしてあげており、山形戦も手堅く試合を運びながら、攻め込む機をうかがうような戦いが想定される。終盤に逆転勝利した山口戦の成功体験はここからリーグ戦の残り2試合、さらにプレーオフを戦う上で、チームの精神的な支えになることは間違いないが、少なくともビハインドを背負わないで後半の勝負に持ち込めれば、勝機は十分に出てくるだろう。
左サイドの主力である松原后も「もう負けられないし。そういった中で、安間さんも本来そういう戦い方をしたいか分からないですけど、こういう戦い方、確率の高い戦い方で、安間さんが自分たち一人ひとりの特長を生かす戦術を組み立ててくれているので。それが一番、今自分たちが勝てている要因だと思います」と語る。ジョン・ハッチンソン前監督が掲げた“アクションフットボール”のような攻撃的な戦い方はハマれば爽快だが、もう1つも負けられない状況を考えても、昇格という唯一絶対の目標に向けて選手たちも安間監督のプランを受け入れていることが伝わる。
最近6試合負けなしの山形は、すでに昇格の可能性は絶たれているが、横内監督が途中就任してから16試合で勝ち点29を獲得しており、昇格圏の上位チームにも引けを取らない。横内監督をよく知る松原は「横さんのチームというのは選手みんなが、良いメンタリティで勝利のために、ピッチに入ってると思います。個々のクオリティを自由に生かしてもらえていると思う」と認めており、一瞬の気の緩みが失点につながってしまうリスクを指摘する。
安間監督も警戒するように、山形はサイドからだけでなく中央でも崩せるチームだ。土居聖真や中村亮太朗といった選手たちに時間をスペースを与えてしまうと、一気に縦を突かれて、元清水エスパルスのFWディサロ燦シルヴァーノにゴールネットを揺らされてしまうだろう。“最後の砦”である川島永嗣の存在は心強いが、前線から中盤、最終ラインと厚みのある防波堤を築いて、山形の縦のルートを遮断したい。そして相手の見せる隙を逃すことなく、ゴールを仕留めていく。

「本当に勝って景色を変えていこいうと言ってるので。まず1試合を勝って、景色を変えていくことが大事だと思っています」と安間監督。山形戦でどういったメンバーをスタートから起用するにしても、“ゲームチェンジャー”あるいは“クローザー”になりうるベンチメンバーを含めて、チームで勝利を掴み取る。改めてチームの一体感が問われるホーム最終戦になりそうだ。


































































