
【サッカージャーナリスト・河治良幸】
ジュビロ磐田はアウェーのロアッソ熊本戦に臨む。前節、ベガルタ仙台には優勢に試合を進めながら、後半アディショナルタイムにFKの流れからゴールを許して、0-1での敗戦。ジャッジに対する疑問の声も少なからず出たシーンではあったが、ジョン・ハッチンソン監督は「選手に対しても正直に言いました。いいパフォーマンスだったよと。ただその中でも局面だったり、その瞬間で結果が変わった。一瞬の局面が重要になってくる」と自分たちに矢印を向ける。
8試合負けなしからの敗戦だったが、攻守ともに全体的なパフォーマンスを見ても、ブラウブリッツ秋田とのアウェーからホームの大分トリニータ、レノファ山口を相手に3連敗を喫した4月下旬の当時とは大きく違っている。左ウイングを担う倍井謙も「そこはみんな口揃えて言っていて、内容がよくなってるのは中でやっている選手も感じてるし。その中で、監督からあったのはゴール前、攻守の両面においてやっぱり、圧倒的な力強さが大事になる」と主張する。
「僕は2年目なので、年間の流れとかをどうこう語る立場じゃないですけど、(上原)力也くんとか長い選手も、ああいう試合は年間に必ず出てくるというのは言ってるし、まだシーズンの中間というのは救いだったと思う。ただ、これをもう1回やってる暇も余裕も無いので。みんな、さすがにメンタルに来たとは思いますけど、切り替えていくしかない」
内容面を振り返ると、仙台戦で勝ち点1を落としたのは最後のセットプレーだが、それまでに多くのチャンスを作りながら、相手GKのビッグセーブも含めて、決め切ることができなかった。そこで1つでも決めていれば、リードを奪うとそう時に試合の進行も変わっていたはず。守備に関しては21試合で25失点だが、ここ5試合では4失点と安定しており、ハッチンソン監督が掲げる”アタッキングフットボール”のベースが組織的な守備にあることも証明されてきている。

だからこそ、仙台戦の最後の失点シーンはもったいなかったが、倍井は「本当に内容がよくても、90分間みんなでタフに戦っても、あれ1つでやられてしまうので。ゴール前の両面でのパワーの使い所というか、みんなで意思統一する必要があるという話をしました」と語った。攻撃におけるビルドアップの道筋は序盤戦よりかなり改善しており、右ウイングのジョルディ・クルークスに偏っていたチャンスメイクも左サイドからの崩し、中央突破と3つの矢印を描けるようになってきている。
また一度相手の背後を狙って、ディフェンスを下げさせてからグラウンダーで繋いだり、少し狭いところでも恐れずにパスを通して前進していくシーンも目立つようになってきた。それは練習のミニゲームを観ていても、キャンプや開幕時からの大きな改善を感じられるところだ。左サイドからの仕掛けを担う倍井も「今は3方向というか、どこからでもゴール前に侵入していける。そこからチャンスを作るだけじゃなくて、決め切るところのフェーズまで持っていけているのはチームとしてもポジティブだと思うので。あとは少しのディテールだと思う」と語る。
その決め切ることが、サッカーにおいては一番難しい作業になってくるのは確かだが、倍井をはじめとしたアタッカーの選手たちも、責任の所在を自分たちに向けられるので、良い意味でシビアに向き合うことができる。ここまでFWのマテウス・ペイショットが8得点、倍井が5得点、大卒ルーキーの角昂志郎とボランチの金子大毅も3得点、渡邉りょう、佐藤凌我、川﨑一輝がそれぞれ2得点と悪い数字ではないが、磐田のスタイルを考えれば、さらに得点数を増やしていきたい。もちろん新加入の”フロン”ことタイ代表FWポラメート・アーウィライが前線の起爆剤になることも期待したい。

熊本戦を前に、MF井上潮音がサンフレッチェ広島から期限付き移籍で加入するという、磐田にとって嬉しいニュースが飛び込んだが、彼が出場可能になるのは早くても次節のホーム札幌戦から。同じく攻撃的なスタイルを押し出す相手に勝利して、ホームゲームに良い流れをもたらしたい。