​初招集で2試合に。後藤啓介が“森保ジャパン”で感じたこと

サッカージャーナリスト河治良幸


“世界一”という大きな夢への第一歩目。11月シリーズの“森保ジャパン”に初招集された後藤啓介はガーナ戦とボリビア戦ともに途中出場。短い時間ながらスケールの片鱗を見せた。ただ、そこにゴールやアシストという目に見える結果はついてこなかった。

A代表デビューとなったガーナ戦は75分。2点リードという状況で、森保一監督が彼に与えたタスクは「まず守備から」。そのタスクを最前線からしっかりと担いながら、後藤はゴールを目指した。最大の見せ場は87分。右WB菅原由勢が背後に抜けてクロス。後藤はセンターバック2枚の間にポジションを取り、タイミングよくクロスに飛び込んで合わせようとした。惜しくも手前のディフェンスにクリアされたが、後藤にとって1つの手応えにつながるシーンでもあった。

「昨日の練習で、(菅原)由勢君がいいクロスを上げるなと思ってた。外でクリアされなければ、俺ともう一人(佐藤龍之介)もいたので、多分ゴールになってた」と後藤は悔やんだが、タイミングさえ合えばという感触は前向きな課題意識に転換される。それが後藤の強みでもある。

ボリビア戦で2試合連続の出場チャンスを得た後藤は左シャドーのポジションでプレー。上田綺世、町野修斗、そして後藤が並ぶ、これまでの日本代表で見たこともない“3タワー”となったが、後藤は左のシャドーと呼ばれるポジションで、1トップの上田よりはやや左の下り目を担当した。

「FWの方が守備はやりやすいなと思ったんですけど。シャドーで出た時にもう少しコミュニケーションとって、自分がどこ閉めて、どこ行くかというのをはっきりして、後ろをもう少し助けられればなと思いました」と後藤。1トップに比べて慣れない守備のタスクを直向きにこなしながら、攻撃面でも違いを出そうとプレーしていた。

大きなチャンスになりかけたのが、後半44分のシーンだ。左の中村敬斗からのクロスが反対の右サイドに流れると、コーナー付近で堂安律が拾う。戻しのパスを受けたボランチの遠藤航が、後ろから追い越す板倉滉に絶妙のスルーパスを送った。その流れに連動して、後藤はゴール前のニアに走り込んだが、板倉のコントロールが若干合わず、相手のディフェンスに処理された。

「ワンタッチでボールが来てれば、多分決まったと思います」

後藤は素直に悔しさを表した。親善試合とはいえガーナ戦、ボリビア戦と日本がリードしての終盤で、森保監督は“ゼロで終える”という明確なメッセージを後藤にも伝えて送り出している。最終予選が終わり、その後のテストマッチも6試合目。本大会に向けて実戦モードになっている段階で、起用される選手にはチームの勝利のためのタスクが求められるのは当然だ。その上で、付加価値をつけて行かなければ最終選考に生き残って行くこことは難しい。

「チャンスをもらえた中で、結果が残せなかったですし、ひとつ守備のタスクはこなせてたと思いますけど、もう1点、もう2点取りに行くという点で、与えられた時間で期待には応えられてないかなと思います」

ガーナ戦が15分、ボリビア戦が7分、後半のアディショナルタイムを合わせても30分弱という時間ではあるが、そうした少ないチャンスでも結果を残した選手が評価を上げていくのが代表の世界だ。後藤もそれは百も承知だが、実質的な最終テストとなる来年3月の活動まで、所属クラブのシント=トロイデンでアピールしていくことが、そこの可能性を高めることにつながる。この大事な時期に、森保監督が初招集の後藤を2試合続けて起用したことが、戦力としての期待の表れだ。

「同じピッチに立って(上田)綺世くんのプレーを見たり、間近で(小川)航基くんの飛び出し見られたので。そういうところと、あとはシンプルにフィジカルとか、あとはゴールですかね」

ピッチに立った二つの試合はもちろん、何もかもが新鮮だったA代表の活動を通じて、後藤が得たものは大きいはず。「いろんな選手がフレンドリーに話しかけてくれて。最初は緊張してたんですけど、徐々に緊張もほぐれて練習から楽しくできましたし、オフの時間でも、いろんな話が聞けて楽しかったです」と後藤。それを一時の思い出ではなく、次のチャンスに繋げていけるかは彼次第だ。
 
(文:サッカージャーナリスト河治良幸)
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タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。

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