テーマ : 賛否万論

あなたはどう思う? 「親ガチャ」を嘆かれたら①【賛否万論】

 「親ガチャ」という言葉が世間を騒がせています。若者は親が考えるより軽い気持ちで使っているという指摘の一方で、一部の人には自分の置かれた境遇を伝える言い得て妙な表現として心に刺さっているようです。軽い気持ちの愚痴かもしれないと分かっていても、もしかしたら自分の子どもが「親ガチャ」を嘆いてくるかもしれません。その時あなたなら、どう答えますか。そもそも「親ガチャ」をはじめとするさまざまな「~ガチャ」について、あなたはどう思いますか?

勤勉に働けば成功/むしろ運やコネが大きい(48カ国中)
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居場所の数と自己認識の関係
居場所の数と自己認識の関係
今まで社会生活や日常生活を円滑に送ることができなかった経験があったか 問題を経験した中で、特に影響が強かったと思うことは何か
今まで社会生活や日常生活を円滑に送ることができなかった経験があったか 問題を経験した中で、特に影響が強かったと思うことは何か
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今まで社会生活や日常生活を円滑に送ることができなかった経験があったか 問題を経験した中で、特に影響が強かったと思うことは何か


 ■問われる親子の関係
 9月24日付静岡新聞に掲載したテーマの予告を見た静岡市駿河区のMさんから早速投稿を頂きました。「親ガチャを嘆かれたら?」というテーマ設定に対するお叱りから始まるご意見でした。
 ◇ーー◇ーー◇
 読者 Mさん(静岡市駿河区)70代
 日本語の乱れが言われている中、「親ガチャを嘆かれたら?」をテーマとして御社が取り上げるとは! 「親ガチャ」と言われて喜ぶ親がいるでしょうか? 親からすればそんなことを言う子は「子ガチャ」でしょう。賛否に値しないテーマだと思います。テレビで一度この造語を目にしましたが、面白おかしく若者受けのする造語をはやらせるのはやめませんか。ずっと以前、テニス界に新星のようにヒンギス選手が現れたころ、「子はほめて育てよ。彼女もそう育てられた」と「ほめて育てる」が盛り上がった時代がありました。それ以来、この論で育っている人たちは多いと思いますが、どんな大人になっているでしょうか。果たしてほめるだけでいい子に育つのか疑問です。当時これに対して少数意見かもしれませんが、「子どもを王様にするな」も言われていました。人としての思いやり、常識などを諭し、教えていくのも大人の務めではないでしょうか。若い世代の親御さんが子どもさんとどんな関係にあるかは存じませんが、少なくとも身近な親子を見る限り、子どもにそう言われるような育て方をしている人は見当たりません。子どもに「親ガチャ」と言わせてしまう親や、言ってしまう傲慢(ごうまん)な子が世の中にどのくらいいるのでしょうか。ともあれ何か問題が起こった時、親子で向き合い、話し合う関係を常日頃からつくっておくことが必要ではないでしょうか。
 ◇ーー◇ーー◇
 「親ガチャ」と聞いて、ショックを受けたり、気を悪くしたりするのはごもっともです。ただ、子どもたちがその言葉を知るのはおそらく防げないでしょう。そして、軽い気持ちで自分の親に言ってみたときの反応を子どもたちは見ているような気がします。“そのとき”に備えて、「親ガチャ」というショッキングな言葉について、読者の皆さんとともに一度、冷静にじっくり考えておきたいとテーマに設定しました。また、実際に「親ガチャ」をはじめとする自分ではいかんともしがたい壁に苦しんでいる子どもや大人も少なくないでしょう。賛否万論の取材班は「親ガチャ」という言葉が話題になっている今だからこそ、救いを求めるかすかな声に皆で耳を傾け、日本を少しでも良くするための議論を重ねる機会を持ちたいと考えています。まさにMさんが「何か問題が起こった時、親子で向き合い、話し合う関係を常日頃からつくっておくことが必要ではないでしょうか」と最後に書いてくれたように。
 
 <メモ>親ガチャ 親と「ガチャ」を合わせた造語。ガチャはもともと、お金を入れてレバーを回すとカプセルトイが出てくる機械(ガチャガチャ)の略。スマートフォンのゲームで有力アイテムなどを入手するために引く抽選もガチャと呼ばれ、より気軽に使われるようになった。好きなカプセルトイやアイテムが手に入るかどうかは運次第であることから、自分では思うようにならない境遇や環境について使われる。国ガチャ、地域ガチャ、上司ガチャ、職場ガチャなどさまざまな「~ガチャ」が派生する。「~ガチャで外れを引いた」「~ガチャには満足」などと使う。
 
 ■親への愚痴はいつの時代も
 思春期の子どもが自分の親を嘆くのは、いつの時代も同じ。20年以上前の1998年1月に本紙で掲載した読者参加型の企画「TalkBattle(トーク・バトル)」の座談会でも、当時の高校3年生が「どんな大人になりたいですか」と聞かれて、こんな答えを返している。
 「今親がうるさくて。私がやりたいと言うと、ほかはほか、うちはうちと分かってくれない。子どもの意見とか聞いてあげられる親になりたい」「うちはあまりにも放任主義なので、もう少し子どもをかまってあげられる大人に」「分かりきっていることを何回も言うので、口うるさいことを言わない人に」。子どもたちは親をある意味、反面教師として冷静に見ていることがうかがえる。「お母さんみたいな親になりたいです」と答えた高校生もいた。
 
 ■3割が「運やコネが左右」 日本人 比較的多い傾向
 多くは軽い気持ちで口にされているとも言われる「~ガチャ」だが、人生観や価値観を背景にした意外と奥深い言葉だ。
 3月公表の「第7回世界価値観調査」(電通総研・同志社大)によると、「人生は思い通りになるか」との設問に「人生は自由にならない」と否定的だった日本人は38.6%で調査した77カ国中6番目に多かった。また、日本人の32.6%が「勤勉に働いても成功するとは限らない。むしろ運やコネによる部分が大きい」と考えていて、逆に「長い目でみると、勤勉に働けば生活がよくなって成功するものだ」と考えているのは62.4%で調査48カ国中33位だった。日本人の3~4割が人生の成功には“ガチャ”の要素が少なからずあると受け止めていると言える。
 中にはより深刻に悩んでいる子どもや大人がいるのも確かだ。13~29歳の男女約1万人を全国調査した19年度の内閣府「子供・若者の意識に関する調査」によると、「社会生活や日常生活を円滑に送ることができなかった経験」が「どちらかといえばあった」「あった」と答えたのは計49.3%。うち何が特に影響が強かったと思うかを聞くと、66.8%が「自分自身の問題」とした一方、29.6%が「学校の問題」、26.9%が「家族・家庭の問題」、23.9%が「仕事・職場」の問題と答えた。
 調査では、家庭や学校、職場、ネット空間などに「居場所」「相談できる場」「困ったときに助けてくれる人がいる場」が多いほど自己肯定感や充実感、将来への希望などが上向いて前向きになることも示された。人生に関わるあらゆることに少なからず運の要素があったとしても、誰でもより多種多様な“ガチャ”を回せる国にすることが大切というヒントが見えてくる。
 (社会部・鈴木誠之、市川幹人)
 
 ■ご意見お寄せください
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