テーマ : 賛否万論

戦争のこと、どう伝えていますか④ しずしんニュースキュレーター/読者の意見【賛否万論】

 ロシアによるウクライナ侵攻は、日本の子どもたちが戦争について考えるきっかけになっています。「ウクライナはどうして攻撃されているの?」「昔の日本はなぜ戦争したの?」。子どもたちの突然の質問に、口ごもってしまう読者も多いことでしょう。それぞれの家庭では、どんな風に平和の尊さを伝えているのでしょうか。しずしんニュースキュレーターの意見と読者からの投稿を紹介します。

 ■キュレーター 内川麻衣子さん(静岡市)NPO法人ピュアスポーツクラブ理事長、ダンス教室MJC指導者・振付家、静岡市スポーツ推進審議会委員、2008年全国JDAダンスコンクールソロ準優勝、11年IDO世界選手権大会(ポーランド)日本代表など
 私は小学1年と3年生の子どもの親です。子どもたちは新聞をペラペラとめくり「この記事は何?」とよく話しかけてきます。ウクライナ侵攻後、町が壊れている写真などを子どもたちはよく目にするようになり、そのたびに何について書かれているものなのか質問をしてきます。新聞の写真なので大人はそれほど衝撃的ではないものと思っていますが、子どもたちの顔からは興味と恐怖心を感じる時があります。
 私の家では子どもたちは小さいので、残虐な映像は見せていません。ただ、今起きている事実は伝えるようにしています。ロシアとウクライナはどうして戦争をしなければならなかったのかという歴史的な背景や地理的な話をしたり、両国はどのような国なのかそれぞれの国の本を借りて調べたりしています。難民やNATOなどの用語の意味と他国の対応の仕方等を新聞の記事をもとに話をすることもあります。話をしているだけでも、時々恐怖心で顔がとても暗くなったりする様子を見て、感情のコントロールがうまくできない年齢の時は惨劇映像は見せないようにしようと思っています。
 リアルな映像は確かに心に届くものは大きいと感じますが、それだけでは恐怖心のみが残ってしまうと思います。大切なのは、惨劇映像を二度と作らないために、私たちは何をしなければならないのかを考えること。過去の歴史や世界の動きをしっかりと把握して、さまざまな視点からの情報を収集できる力と、それを踏まえて自分の考えをまとめることができる考察力が大切なのではないかと思っています。

 ■キュレーター 中村真二さん(浜松市西区)「てんかん」という脳の病気を持つユーチューバー「リンカーン中村」として、てんかん患者が住みやすい世の中をつくるために、SNS発信、講演、執筆、メディア出演など活動中
 「今回のロシア侵攻で父と兄を亡くし、そのショックで母は病気になりました。それでも私は生きるために働いていかなければなりません」
 先日、仕事でウクライナ人のデザイナーの方とオンラインで話をする機会があったのですが、僕は思わず言葉を失いました。同じ世界に住む同じ一人の人間が、全く想像のつかない状況に置かれていたのです。もちろんテレビで報道されている様子を見ることで、凄惨(せいさん)なことが起きているのは分かっていました。しかしながら、実際に経験した方の話を聞くことで、改めて戦争の怖さを痛感することになったのです。
 サイレンが鳴ればシェルターに避難する生活を送っている彼女は、気丈に振る舞いながらも強い言葉で語ってくれました。「私は全世界に助けを求めています。私たちはこの戦争を望んでいません。平和を望んでいます」。この言葉はきっと、ニュースや新聞の記事で見ているだけでは、正直、僕の心には残っていなかったと思います。
 心の底から強く願う一人の人間から、たとえオンラインであっても実際に聞いたことで、僕の心に深く刻みこまれました。僕は現在33歳で、戦争を経験していません。祖父や祖母からも戦争の話を聞いたことはありません。しかし今回実際に聞いた戦争の話は、これから伝えていかなければいけないなと強く感じています。当たり前の生活がどれだけありがたいのかを、日々かみしめて毎日を送っていきたいと思います。少しでも多くの方に届けば幸いです。

 ■読者 澄んだ青空さん(焼津市)71歳
 いまだに明快に子どもたちの質問に答えられない大人の自分がもどかしい。
 「なぜ大人は戦争をしてきたの」「なぜ大人は戦争を止められなかったの」「なぜ大人がしてきた戦争の怖さなどを大人は子どもに話すの」「なぜ大人は子どもに戦争をした大人としての反省の話をしないの」「なぜ大人は私たち子どもを戦争に巻き込んだの」などなど…。
 これらの子どもからの質問に恥ずかしながら子どもに分かりやすく話すことができない。「大人」である自分が「子ども」の素朴な疑問にはっきりと答えられず、「大人」とは何であるのかも考えさせられる。子どもたちには、これらの疑問に答えられ、どうしたらよいか考え行動できる「大人」になってほしい。
 でも、答えられる「大人」になるように自分は努力するよ。

 ■読者 湯山芳健さん(裾野市)78歳
 半年前になりますが、地元の小学校の6年生に戦争について語る時間をいただきました。これまでは戦争現役世代の方々がそれぞれの実体験を話されてきましたが、今回は戦争直後世代に機会が与えられたわけでした。
 子供たちに何を伝えたら良いのか。短い時間ではありますが、実体験がないのはつらいところでした。そこで思ったのは、77年間一人も戦死者を出していないこの国を彼らに引き継いでもらいたいということでした。一番大切なものは何ですか、との問いかけに全員が大きな声で「命」と答えてくれました。
 戦争は一人一人の命の扱いが最も軽く、虫けらのように扱う時代であり、逆に平和な時代は一人一人の命が最も重く扱われている社会という切り口から、原爆、空襲、沖縄、特攻隊、玉砕、赤紙等々のことを話させてもらいました。彼らには今後、命の軽い重いという観点からも社会の動きをみてほしいとお願いしました。

 ■読者 小泉達生さん(静岡市清水区)63歳
 平和教育というと、戦時中の凄惨(せいさん)な国民生活や残酷な悲劇を伝えようとするものが圧倒的に多い。情感や情緒に訴えた後に、だから戦争は悪いと感情的に締めくくる。
 果たして、戦争を感情論だけで進めていいのだろうか。思考や判断を重視する平和教育、すなわち「日本国の重要判断を委ねられた“為政者”の視点で問いかけ、傍観者ではなく主体者となって考える場」こそ必要であろう。どうして無謀な戦争を始めたのか? いつなら戦争を止められたのか?
 「戦争講座」を3カ所の交流館で担当した。児童生徒は目を輝かせて戦争と格闘した。
 ①「戦争」とは何か?
 ②アジア太平洋戦争の内容は?
 ③全国都市が空襲された理由は?
 ④清水大空襲を、アメリカ側と日本側の時程表(自作)から探ろう。
 ⑤どのようにして戦争が終わったのか?
 ⑥戦争についての考えを交わそう。

 ■次回も引き続き キュレーターと読者の意見特集
 次回も「戦争のこと、どう伝えていますか」をテーマに、読者の皆さんから寄せられたご意見を紹介します。さまざまな立場からの投稿をお待ちしています。お住まいの市町名、氏名(ペンネーム可)、年齢(年代)、連絡先を明記し、〒422―8670(住所不要)静岡新聞社編集局「賛否万論」係<Eメールshakaibu@shizuokaonline.com>にお送りください。紙幅の都合上、編集させてもらう場合があります。

 ※「しずしんニュースキュレーター」は、新聞記事や時事問題の“ご意見番”として、静岡新聞の記者が推薦した地域のインフルエンサーです。毎回それぞれの立場や背景を生かしたユニークな視点から多様な意見を寄せてもらいます。

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