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特集 : 賛否万論

半期の振り返り 記者座談会①「親ガチャを嘆かれたら」  

 ■テーマ「『親ガチャ』を嘆かれたら?」(2021年10月1日~11月12日)
 「親ガチャ」という言葉が世間を騒がせています。軽い気持ちで使われることが多いという指摘の一方で、一部の人には自分の今の境遇を伝える言い得て妙な表現として心に刺さっているようです。もしかしたら自分の子どもが「親ガチャ」を嘆いてくるかもしれません。その時あなたなら、どう答えますか。そもそも「親ガチャ」という言葉についてどう思いますか?【インタビュー】独立型社会福祉士 川口正義さん、ゲームシナリオライター 生田美和さん

 市川 親ガチャという刺激的な言葉に賛否あったが、言葉の背景を有識者や皆さんの意見でひもとくと、今の格差社会に潜む若者の環境や不満が見えてきた。
 佐藤 より恵まれた環境をうらやむことは子どもなら誰しもある。自分は「なるほど」と思った。自分がもし子どもから「親ガチャ外れた」と言われたら、生田美和さんと同じく、申し訳なく感じると思う。十分に応えられなかった、ごめん、と。気軽な使用例も多いだろうが、どうしようもない現状に苦しんでいる子どもたちがいることも事実だ。
 市川 私もこの言葉が拡散されること自体は悪いことではないと思う。読者からも批判的、懐疑的な意見が寄せられたが、この言葉が格差社会や子どもの貧困の問題に皆が目を向けるきっかけになればいい。社会の課題解決には社会全体が問題意識を持つことが欠かせない。
 鈴木 ご意見を機械学習で分析し、共起ネットワークと呼ばれる図を描いた。目に付くのは「親子」-「支配」-「苦しい」-「格差」という並び。格差社会だったり、容易に他の家庭と比べられたりする時代にあって、親子関係に息苦しさを感じてしまうことが親ガチャという言葉が生み出される背景にあると考える投稿が多かったことを意味している。
 市川 川口正義さんは子どもの居場所づくりを進めているが、親も生活に困っているから助けてほしいとSOSを出してくるという。今の社会福祉が十分機能していない証で、本来は政治行政がいち早く取り組まなければならない問題だ。
 佐藤 親の所得格差が子の教育格差につながっている。そこから生まれる負の連鎖をどう断ち切っていくかは政治の喫緊の課題。刑事裁判を傍聴していると、罪を犯した若者の根本原因は不遇な家庭環境にあると感じることがある。司法は罪を裁けても、その根本原因は解決できない。どうしたらいいんだろうと思ってしまったことは一度や二度ではない。
 鈴木 解決は簡単ではないが、生田さんが「親以外のいろいろなガチャが引けることが大切」と言ったように、親ガチャに悩んでも他のいろいろなガチャを気軽に回せる国にしてほしい。「親ガチャなんて個人の努力でいくらでもカバーできる」と胸を張って言えるのが理想だ。
 佐藤 親ガチャが注目されたのは親世代や社会へのメッセージと受け取れる。一度も好景気を感じたことがなく、将来に不安が募る中、何とかしてくれよ、という訴えだと思える。今後も流行語をただのはやりと表面的に捉えず、それが生まれた理由を皆で深く考えていきたい。
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 2021年度の下半期分として21年10月から始まった「賛否万論(さんぴばんろん)」の第4期。社会部の記者が取材に当たりました。それぞれのテーマについて、皆さんから寄せられた投稿や取材で浮かび上がった課題や記者の思いを座談会形式でまとめました。(社会部・鈴木誠之、佐藤章弘、市川幹人)

 分析方法 立命館大の樋口耕一教授らが開発した計量テキスト分析ソフト「KHCoder(KHコーダー)」を使用。「ジャッカード係数」と呼ばれる統計手法を用い、関連が特に高いとみられる単語間を線でつないで「共起ネットワーク」を描画した。今回の分析では円の大きさは単語の相対的な出現数を表している。

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