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若い人にこそ知ってほしい!「老後のお金」のリアル

今、天海祐希さん主演の映画「老後の資金がありません!」が上映されています。この映画は、節約がモットーで、夫の給料や自分のパート代をやり繰りして、老後の資金を貯めてきた主婦が直面する悩みをつづった、垣谷美雨さんの小説を映画化したもの。老後は安泰だと考えていた主人公が、さまざまな問題に振り回されるストーリーになっています。

みなさんも、「私は大丈夫」と思っていても、いつ、そういう危機に直面するかもわかりませんし、「まだまだ先の話」と考えていても老後はきっとすぐにやってきますよ。

……ということで今回は「若い人も考えておきたい、老後のお金」をテーマに、日本一元気な経済ジャーナリスト堀浩司さんから、SBSアナウンサー牧野克彦がお話をうかがいました。
※11月18日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。
老後の資金

老後の備えは絶対に必要! まず始めるべきは?

牧野:「老後の資金は2000万円必要」というのは映画の紹介文にも書いてありますし、金融庁の報告書にもそのような文言があって話題になったことがありましたね。

堀:金融庁の報告書では、平均的とする夫婦二人の老年世帯で、ひと月の年金などの収入額が20万9000円、支出額が26万4000円で、差引き5万5000円が不足すると。このひと月の不足金額が30年続くと、1980万円という数字になるんです。人それぞれ老後の生活は違いますし、すべての人に当てはまる金額ではないですが、老後に備えての準備は絶対に必要だと思います。

牧野:まず、どんなことから始めればいいでしょうか?

1. 自分で収支を把握する

堀:始めていただきたいことがふたつあります。まず、自分で収支を把握するということ。改まって家計簿をつける必要はなく、例えばエクセルで毎日の収入と支出を書くだけでも、自分の無駄な部分が見えてきます。

2. 自動引落で積立貯金

堀:ふたつめは、預金からの自動引き落としで積立預金を始めることです。現役時代でも日々の生活は大変ですから、金額は1000円でも5000円でもいいので、とにかくお金を貯めるという習慣を身につけること。積立預金の残高が増えてくると、なんだか嬉しくなって、もっと貯めたい気持ちになります。

牧野:それはありますね、習慣化させて、貯めるのが当たり前という状況を作っていくんですね。このほかみなさんが心配しているのが、年金です。年金はどうでしょう、あてにしない方がいいのでしょうか?

実は年金は有利な金融商品!?

堀:そこは大きな誤解です! 年金は国の一番大事な事業なんです。実は年金こそが、最も有利な金融商品なんです。例えば平均余命で生存した場合の払い込んだ保険料と、貰える年金額を現在の高齢者と比較すると、率はぐんと下がります。それでも1995年生まれ(現26歳)の人が、ずっとサラリーマン生活を送る場合、保険料の総額3,700万円に対して、年金受取総額は2.3倍の8,500万円。ずっと自営業を続けている人だと、保険料総額1,400万円に対して、年金受取総額は2,300万円の1.7倍になるんです。

ただ平均よりも早く亡くなってしまうと、受取り年金総額は減ります。でも厚生年金の場合は遺族年金が支払われますし、長生きすればするほど多くなります。

ある証券会社のホームページでも、「公的年金は、かけたお金が戻ってこない、といったネガティブなものではなく、長生きすればするほどお得な保険だと言えます」と書かれていました。とかくこのようなセールスでは、「年金はあてになりませんよ」というセールストークが多い中で、この証券会社は信頼できる感じがしました。

牧野:確かに金額を聞くと、今の時点では、なかなか率はいいんじゃないかという気がします。ただ、年金だけでは不安ですという声も聞こえます。

年金だけでは老後は不安?

堀:ご夫婦ふたりが厚生年金に加入できるフルタイムで共働きの場合、子どもがいれば育児は大変でしょうけれど、ふたり分の年金が出ますから、老後の生活を送れる年金額になります。それ以外のご家庭では、なんとか年金額を増やす、あるいは、年金のほかに資金を手当てすることを心がける必要があります。

まず奥さんがパート勤務の場合、社会保険の適用条件が広がっていて、パート勤務でも社会保険に加入するようになってきているんです。健康保険料の負担も増えるので入らないという人も多いのですが、厚生年金の加入で年金額を増やすメリットは、それ以上に大きいと思います!

牧野:ひとりで働いている家庭と、共働きの家庭だと事情が変わってきますか?

堀:はい、それはだいぶ違います。次に自営業者やフリーターの場合なんですが、国民年金だけではやはり老後の生活費はまったく足りません。国民年金基金への加入をおすすめします。こちらは掛け捨てではなく終身年金です。早期死亡の場合は、遺族一時金が支給されます。しかも掛金が全額、確定申告の際に所得から差し引かれるので、税金が安くなるメリットもあります。

サラリーマンでも利用できる制度は?

堀:サラリーマン、公務員、自営業も利用できる制度に、個人確定拠出年金( iDeCo:イデコ)があります。これは、民間金融機関の保険、定期預貯金、投資信託からひとつを選んで積立していきます。こちらも掛金全額が所得から差し引かれるので、払込期間中は税金が安くなります。金融商品で利益が出た場合も非課税です。個人確定拠出年金の一番のおすすめポイントは、60歳までは引き出せないという点でもあります。

牧野:個人確定拠出年金は、可能な限りかけていた方がいいですか?

堀:そうですね、税金も安くなりますし、60歳まで手が付けられないのは不便なようですが、でも、老後のためにはありがたいポイントでもあります。

ほかに年金を増やす手立ては?

堀:年金は原則65歳からの支給なんですが、年金受給を遅らせると、一生涯の年金を増やすことができます。ひと月受給を遅らせると0.7%、1年で8.4%。現在は70歳まで繰下げますと42%なので、約1.5倍にも増やせる制度があるんです。

牧野:最近、私たちは何歳まで働くんだろうと思います。元気だったら、それだけ働いて稼いだ方がいいんですね。最後に、堀さんから何かアドバイスはありますか? 

堀:老後のことは「まだまだ先」と若いうちは考えがちですが、若い時から始めることで、時間を武器に負担も少なくて済みます。さらに日々のお金を意識することで、今の生活にも役立つということです。ぜひ、いろいろ考えていただきたいと思います。

牧野:意識を変えるだけで、お金貯め体質になりそうな気がしました。非常に勉強になりました!
 
今回お話をうかがったのは……堀浩司さん
経済学は私たちの暮らしが良くなるためにある学問、私たちみんながわかる経済のお話を講演、ラジオ、テレビ、大学教員、執筆で。アルバイトをしていたラジオ局で学生時代に音楽番組のパーソナリティを務めて以来、その出演歴は40年! 大学常任理事として大学経営にも、税理士として企業経営指導にも携わる。
 

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