【沼津市立図書館の文芸講座「江戸の怪談を読む」】静岡大・小二田誠二教授の3回講座。「怪談とは何か」を知る

静岡県のアートやカルチャーに関するコラム。今回は6月12日に沼津市立図書館で開かれた、文芸講座「江戸の怪談を読む」第1回を題材に。
(文・写真=高度専門記者兼論説委員・橋爪充)

沼津市立図書館で企画展「語り継がれる怪談」が5月1日から開かれている。日本の怪談に焦点を当て、土着の怪談「百物語」を集め、妖怪の絵を見比べる。図書館の企画展なので、「今も楽しめる怪談」として単行本も30点近く選書し、解説を加えている。

『東海道四谷怪談』(金原瑞人著、岩崎書店)や『牡丹灯篭』(赤木かん子編著、ポプラ社)といった“古典”から、漫画『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴作、集英社)まで網羅。このリストは、怪談初心者にはとても参考になる。

展示の関連企画である文芸講座「江戸の怪談を読む」の第1回をのぞいた。講師は静岡大人文社会科学部の小二田誠二教授。 日本文学、地域研究、日本史が専門だが、筆者は「怪談の師匠」として認識している。

小二田教授は2010年ごろ、怪談のイベントを始めた。自身が解題と解説を担当した『死霊解脱物語聞書(しりょうげだつものがたりききがき)』の発刊を機に2012年、「累(かさね)の会」と名付けた。筆者は2014年8月、静岡市葵区の「フリーキーショウ」で開かれたイベントで、小二田教授と怪談の楽しさに巡り合った。

当時は『真景累ケ淵』にインスピレーションを受けた漫画『累―かさね―』が話題になっていた。イベントには作者の松浦だるまさんも来ていた。あべの古書店(静岡市葵区)店主の鈴木大治さん、能楽師の安田登さん、怪談専門誌「幽」の東雅夫編集長、漫画原作者の鶴岡法斎さんらも登壇した。なんとも豪華な顔ぶれだった。

それから12年。怪談はさらに多くの人に愛されるようになったようだ。平日夜の図書館に、多くの市民が集っていた。目視で100人近くはいただろうか。

3回連続講座の第1回ということで、小二田教授の話はまず「怪談って何?」から始まった。日本で三大怪談と言うと『東海道四谷怪談』『番町皿屋敷』『牡丹燈籠』が挙がるが、小二田教授によると『牡丹燈籠』ではなく『累ケ淵』だという。『牡丹燈籠』は中国から輸入された「原作もの」だから、というのがその理由。なるほど。

怪談は「怖くなくていい」というのも目からうろこだった。「不思議な話、妖しい話」が怪談であり、神仏の霊験譚も入るという。確かに、神仏の話となれば「信じる者」は救われ、「信じない者」は場合によってはたたられる。そういえば、因果応報と怪談は相性がいい。

この日の講座では「累ケ淵」の物語を、原作とも言える『死霊解脱物語聞書』をひもときながら説明した。怪談に潜む、人間の哀しさを受け取った。

小二田教授は2014年の筆者のインタビューで、「時代を超えて怪談が愛される理由は」という問いに対して次のように答えている。

「いつの世も、社会と折り合いを付ける上で『生きづらさ』を感じる人がいる。怪談には、それを和らげる力がある。天災などによる近親者の不慮の死を受け入れる助けにもなる」

ハンバート ハンバートのドラマ主題歌が頭に浮かぶ。

「毎日難儀なことばかり 泣き疲れ眠るだけ」「日に日に世界が悪くなる 気のせいか そうじゃない」(「笑ったり転んだり」)

もしかすると、小二田教授のインタビューが記事になった2014年より現在の方が、怪談を必要とする人は多いのかもしれない。

<DATA>
■沼津市立図書館文芸講座 企画展「語り継がれる怪談」
住所:沼津市三枚橋町9-1
開館:火水木金曜午前9時半~午後7時、土日曜と祝日午前9時半~午後5時(月曜休館)
※文芸講座「江戸の怪談を読む」の第2回は6月19日、第3回は6月26日。いずれも午後6時半~8時。電話(055-952-1234)による事前申し込みを推奨

 

静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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