【老いる桜】今年の花見シーズン、東京都内の桜の名所で倒木が相次いだ。背景には全国的な老木化がある。末永く安全に桜を楽しむためにはどうすればいいのか!?

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「老いる桜」。先生役は静岡新聞の川内十郎論説委員です。
(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2026年4月28日放送)

(山田)倒れる桜の木が増えているようですね。

(川内)私は4月23日付静岡新聞の1面コラム「大自在」でも取り上げましたが、今年の花見シーズン、東京都内の桜の名所で倒木が相次ぎました。世田谷の砧公園では3月上旬と4月上旬に桜の木が倒れ、けが人も出ました。

皇居のお堀の千鳥ケ淵や国立市の駅前でも4月上旬に倒れました。さらに福岡市の公園でも。「そこでお花見大丈夫?」という状況です。

(山田)そんなに多かったんだ。

老木化は全国的な課題


(川内)背景にあるのは、老木化です。ソメイヨシノの寿命は一般的に60~80年とされています。1950~60年代の戦後復興期から高度成長期に多く植えられた桜が、全国で一斉に老齢期を迎え、倒木リスクがある桜が増えています。

(山田)そういうわけか。寿命は初めて知りました。

(川内)老木化の現状は、まさに日本の人口構成のようです。ソメイヨシノは成長が早く、たくさんの花が咲くことから全国的に増えました。東京は人口が多く、都市部に多数の公園が集中しているので、桜を含めた倒木の人的事故が多発しています。空襲被害が大きく、緑を取り戻すために多くの樹木が植えられたということも関係ありそうです。

(山田)桜の名所というのは人工的に作られたんですね。

(川内)開花時期は冬の間に蓄えた養分を一気に使う「全力疾走」状態のため、木の負担が大きく、弱っている木にとっては決定打となり、一番倒れやすいと言われています。

(山田)エネルギー全開で、必死に咲いているんだ。

(川内)人的・物的被害を防ぐために行政などによる木の状態のチェック、剪定(せんてい)や伐採、施肥などの管理が重要なのは言うまでもありませんが、人手や予算の不足も指摘されています。

国の調査では街路樹や公園の木を定期的に巡回している自治体は4割にとどまりました。樹木医など専門家の目も欠かせません。名所として知られる東京の上野公園や目黒川沿いでは、区などが数年前から大規模な剪定を行っていて、見栄えは落ちましたが、「安全第一に」とのことです。

(山田)桜の木は触っちゃだめと聞いたことがありますが、老木化のせいもあるのかな。

樹勢の衰えが空洞化や根腐れを招く

(川内)樹勢が衰えると、カビの繁殖による幹内部の空洞化や根腐れなどが起きやすくなり、折れたり根元から倒れる要因になるとのことです。

近年は特定外来生物「クビアカツヤカミキリ」による深刻な被害が広がっています。2012年に国内で初めて確認され、急速に生息域が拡大しているとのことです。ふ化した幼虫が木の中に入り込み、内部を食い荒らします。

(山田)食べちゃうんだ。

(川内)突然倒れることもあり、素人が危険を見抜くのは難しそうです。専門家はポイントとして、▽根元に大きな割れ目や亀裂がある▽幹や枝にキノコが生えている▽木が傾いている▽同じ木の中の一部に花が咲いていない枯れ枝がある―などを挙げます。大雨や強風の日、その直後は老木や傾いた大木に近づかないことが大切のようです。

(山田)リスナーから声が届いています。「名所になればなるほど、倒木対策は大変そうだ」とのこと。分かります。

別の品種に植え替えの動き


(川内)老いた桜を世代交代させる際、別の品種に植え替える動きが出ています。後継として注目されているのは、ソメイヨシノと樹形が似ていて、ややピンク色が濃いジンダイアケボノという品種。

名前は東京調布市の神代植物公園で新品種と確認されたことに由来します。病気に強く、ソメイヨシノより寿命が長いとされ、管理しやすい。静岡市の駿府城公園など県内でも植栽例があります。

(山田)今、端末で画像を見ていますが、確かにカワヅザクラほどではないもののピンクが少し濃いですね。これからはソメイヨシノに代わってこの子たちが主流になるのか。

(川内)公園の樹木による事故では2024年9月に東京・日野市で落下したイチョウの枝の枝の下敷きになった男性が死亡しました。

国土交通省によると、近年、街路樹の倒木は年平均5千本を超えます。原因は強風や病害などで、倒木に絡む人身事故は2021年4月~24年11月の間に33件ありました。強風が原因といっても、老木化で弱くなっているところに強い力が加わった例もありそうです。

(山田)年間5千本以上か。多いな。

(川内)街路樹も公園の桜と同様、戦後復興期や高度成長期に多く植えられました。成長が早い木が多く、イチョウ、桜、ケヤキ、ハナミズキなどが主。街路樹は排気ガス中の二酸化炭素を吸収し、防音対策にもなる一方、過酷な環境にさらされています。道路の拡幅や地下の工事で十分に根が張れないケースもあります。

(山田)僕たちのために一生懸命生きているんだ。

AIを使った樹木診断も

(川内)先ほど話した東京の砧公園ではAI (人工知能)を使った樹木の診断を試験的に始めました。幹や根の周りを撮影し、樹皮やキノコの状態から「おおむね健全」から「至急専門家確認」まで4段階で判定するとのことです。ただ、精度にはまだ課題があるようです。

焼津市は樹木を含む公園の「気になる箇所」を市民がスマホで情報提供できるシステムを運用していて、こうした仕組みも迅速な対応に役立ちそうです。

(山田)まだまだいろんなチェック方法が生まれそうですね。

(川内)街を彩る樹木は人々の心を豊かにし、景観の向上や木陰による涼などをもたらします。地域のインフラの一つと言えるのではないでしょうか。

(山田)緑があるのとないのでは大違いだ。

周囲の樹木に関心を


(川内)今回、公園の桜や街路樹について調べ始めて以来、周囲の樹木が気になっています。「年を取っているな」、「放置されているようだ」、「これはしっかり剪定されている」などと感じるようになりました。みんなが敏感になってくれればいいなと思います。

(山田)リスナーから声が入りました。「フラワーパークに行くとジンダイアケボノが多いですよ」「姫路城の桜は根を踏まないように、近くを歩けないようになっています」「花びらが散るころ桜の木の下を歩くのが楽しみだったのに、うかつに歩けなくなるのか」など。

(川内)花吹雪は独特の情緒がありますね。

(山田)それを今後も楽しめるようにしなければ。

(川内)市民の力やAIなども活用し、人と樹木が末永く共生するためにみんなが協力し、知恵を絞っていく必要があります。

(山田)本当にそうですね。皆さんもぜひ、周りの樹木に関心を持ち、どんな状況か観察してみてください。今日の勉強はこれでおしまい!

SBSラジオで月〜木曜日、13:00〜16:00で生放送中。「静岡生まれ・静岡育ち・静岡在住」生粋の静岡人・山田門努があなたに“新しい午後の夜明け=ゴゴボラケ”をお届けします。“今知っておくべき静岡トピックス”を学ぶコーナー「3時のドリル」は毎回午後3時から。番組公式X(旧Twitter)もチェック!

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