(文と写真=論説委員・橋爪充)

静岡県立美術館の「40周年記念展」「静岡県立美術館をひらく」と銘打っているので、コレクション展だと思っている方が多いだろう。間違ってはいない。約2900点に及ぶ同美術館の収蔵品から選ばれた“スター”がずらりと顔をそろえている。
伊藤若冲の『樹花鳥獣図屏風』
伊藤若冲の『樹花鳥獣図屏風』、横山大観の『群青富士』、ポール・ゴーギャンの『家畜番の少女』、 草間彌生の『最後の晩餐』を同時に見る機会はそんなにないと思う。個人的には、静岡県美のコレクションの中でで一番好きなクロード・ロラン『笛を吹く人物のいる牧歌的風景』が、アールト・ファン・デル・ネール『森の風景』と隣り合わせで置かれていて、ハッとさせられた。夢見心地な『笛を吹く人物-』と、木々を写実的に描いた『森の風景』。構図は似ているが、「森」の捉え方がまるで違う。『森の風景』で存在感を示す大木は雷に打たれたように、上部を失っている。
クロード・ロラン『笛を吹く人物のいる牧歌的風景』(左)とアールト・ファン・デル・ネール『森の風景』
ただこの記念展の主題はコレクションのお披露目ではない。「美術館とは何か」という自問自答を来場者に見せる、というアクロバティックなことをやっている。
静岡県美は2022年4~5月の「大展示室展」で、展示施設としての美術館の工夫、つまり作品を入れるケース、台車、壁、照明などを展示した。この時期はコロナ禍で巡回展が思うに任せない時期でもあり、学芸員たちのため込まれたクリエイティビティーの爆発を感じた。
関連企画に木下直之館長の講演「美術館とは壁である」があった。表現物、創作物を壁で囲った室内で見せ、保存する仕組みが美術館である。そんな内容だった。今回の40周年記念展は、この講演と地続きだと感じる。
横山大観の『群青富士』
木下館長が担当する第1室は、寺社の境内にある絵馬堂と美術館を比べる。「美術館とは何だろう」という問いの答えを導く作業を絵馬堂から始めている。絵馬堂には屋根はあるが壁がない。絵馬は神仏にささげられたものなので、雨ざらしになっても平気。なぜなら人間の鑑賞を目的としていないから。
一方、美術館は絵や彫刻を人間に見せるための空間である。神仏を追い出した空間。だから細心の注意を払って作品を保とうとする。これは実に理解しやすい論法である。絵馬堂との違いが、すなわち美術館の核なのだ。
ストンと腑に落ちる。「美術館とは何か」といういかにも手ごわそうな問いに、親切に寄り添っている。40周年記念展の、最も優れた点はここにある。
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■静岡県立美術館「静岡県立美術館をひらく 7つの扉」
住所:静岡市駿河区谷田53-2
開館:午前10時~午後5時半(月曜休館、5月4日〈月・祝〉は開館し5月7日〈木〉に休館)
観覧料(当日):一般1400円、70歳以上700円、大学生以下無料
会期:6月21日(日)まで








































































