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雑誌「まんがタイム」の2024年12月号~2025年11月号の連載や描き下ろしを収録。連載から10年以上経過しているが、折々の季節の話題やニュースを丹念にすくい上げ、静岡ネタ満載の四こま漫画に昇華する手腕はいささかも鈍ることがない。静岡県内の架空の会社の本社支社で働く若い社員たちの会話が楽しい。
タイトルに「ローカル」という言葉を冠しているが、ここには二つの意味がある。一つは全国47都道府県における静岡県の位置づけ。「首都圏外」という地理的条件を誇り高く表明している。そしてもう一つ。東西に広い静岡県の地域間の文化や思考の違いを「ローカル」という言葉に託している。12巻は、後者の意味を打ち出す話が多い印象だ。
熱海市出身の新人・天道七帆は南伊豆町出身の同期・小繭ちゃんに対し、軽々しく「伊豆」という地域名を使ってしまい「熱海以外の伊豆の気持ち 考えたことある!?」と反駁される。確かに熱海市は伊豆の玄関口ではあるが、首都圏客をそこで足止めさせている印象もある。引っ込み思案な小繭ちゃんには、伊豆を熱海だけで語られることに悲しみと悔しさの両方があるようだ。
小繭ちゃんは、別の話でも「徳川家康よりウィリアム・アダムス(三浦按針)の方が身近」と発言している。静岡市在住の有野りん子らは「やっぱり伊豆は NOT家康圏!!」と改めて認識する。歴史上の人物に対する距離感の微妙な違いを必要最小限の会話で浮かび上がらせる瀬戸口さんの語り口は、名人芸とすら言えよう。
富士市の「サイダーかん」もローカルを象徴するような話題だ。富士山信奉者の水馬咲耶が「富士宮(ミヤ)の私も食べたことない」と言っている。静岡市出身の筆者もなじみがないが、富士市では給食の定番メニューだったという。
富士山の入山料徴収や県内荒茶生産量が鹿児島に抜かされたことも扱っている。どちらも2025年の県内10大ニュースの一つに選ばれがちなネタだ。ジャーナリスティックな視点が冴える。茶の産出額と生産量の違いもさり気なく説明されていて、まるで新聞記事の「とはもの」のようだ。静岡新聞の名物コーナー「茶況」にも触れる。「ローカル女子」としての情報収集の的確さに胸打たれた。
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