<プロ野球>DeNA石田裕太郎(静清高出)「自分の色で勝負する」 球速140㌔台で強打者を抑える変幻自在の投球術

プロ野球DeNAの石田裕太郎投手(静清高出)が変幻自在の投球術に磨きを掛けている。2年目の今季は21試合に登板し、3勝5敗1ホールド、防御率3.57。
先発としてスタートしたものの援護に恵まれない試合もあり、シーズン後半は中継ぎを担うなど難しい役回りとなったが、数字には表れない手応えもあった。

「前半は探り探りで、中盤から終盤にかけて自分の目指すべきポイントが見つかりました。この感覚を(来季も)なくさないようにしたいです」

シーズンを戦いながら、理想の投球を追求してきた。

アングルへのこだわり

7月19日の中日戦に3番手で登板し、1回4安打2失点で負けが付いた。
「名古屋(バンテリン)ドームは初めて投げたんですけど、マウンドが高いんです。自然と(腕の)アングルが上がってしまって。コーチから『裕太郎はシュートして伸びていく球が持ち味だから、アングルをもうちょっと気にした方がいいよ』と言われたんです」

腕の角度について説明する石田投手(アングルが上がった時の位置)

アングルを下げた時の腕の位置

甲子園のマウンドで感覚つかむ

続く7月28日、阪神戦が行われた甲子園球場のマウンドも初登板だった。
「甲子園のマウンドは傾斜があまりないんです。そこで『これだ』っていう感覚を見つけました。ボールを上からたたくんじゃなくて、ボールの下を押し込むというか、ボールの軌道に自分の体が入っていくようなイメージ。アングルも自然と下がっていきました」

「ボールの下を押し込む、ボールの軌道に自分の体が入っていくようなイメージ」

「この投げ方で連投はキツい」

中継ぎを担ったシーズン終盤は巨人、広島戦と連投し、クライマックスシリーズ(CS)前にも社会人との練習試合で連投の機会があった。
「肩の張りが全然取れなくて。自分は先発希望ですけどリリーフで連投になった時に、この投げ方だとキツいなと思ったんです。そこからもっと(腕の振りを)コンパクトにしようと思いました」

CSは3試合7回無失点

意識したのはDeNAの野手が苦戦していた中日・藤嶋健人投手や阪神・岩崎優投手(清水東高出)。共通点はテークバックが小さくて球の出どころが見えづらく、140㌔台の球速でも「球が速く見える」。石田投手はCSで「コンパクトに」を実践した結果、3試合7回を投げて無失点。手応えを得たという。

「球質などは別に変わってないんですけど、いつもなら当てられていた真っすぐで差し込める感覚を見つけました。引き出しを増やしたいんでいろんな選手に話を聞いているんですが、西武の今井達也さんも『肘を上げない』というようなことを言ってましたね」

「ノーマルじゃないことが強み」

こうした石田投手の試行錯誤には、球速140㌔台でプロの強打者を抑えるための〝秘策〟が詰まっている。
プロでの2年間で確信したのは「ノーマルじゃないことが強みになる」ということ。

「僕の真っすぐはシュートしてますし、スライダーも人より曲がる。人より角度がないので逆にホップする感じ。去年はプロに入って食事もおいしくて、筋トレもしっかりできるようになって、球が速くなったんです。それでアングルが少しずつ上がってしまって、後半戦は自分の持ち味がなくなってしまって(打たれた)。アングルを低くするために、(オフに)スイーパーを覚えようって思ったんです」

スイーパー習得し三振増

昨オフに習得したスイーパーをシーズンを通じて自分のものにした結果、三振も増えた。「今年1年、スイーパーがなかったら多分しんどかったと思います。トライして良かった」。今オフはさらに、カウントを取る変化球としてカットボールを磨こうと考えている。

転機は中大時代、西舘との出会い

「ノーマルじゃない投手」へのこだわりは、中大時代にさかのぼる。
後に巨人にドラフト1位で指名を受けた同級生の西舘勇陽投手との出会いが転機になった。150㌔台の直球で圧倒する西舘投手を前に、同じ土俵では勝負できないことに気付いた。「球速がフォーカスされますけど、僕はそこを目指すと埋もれてしまう。彼(西舘投手)のおかげで、気付くことができました」

打者の狙いを外す

腕の角度、コンパクトな振り、二段モーションとクイックを併用した足の使い方など、したたかに打者の狙いを外す。
「自分の色があるピッチャーは残っていくと思います。誰よりも球が速いとか、変化球がいいとか、何かがあればいいですけど、(自分のように)少しコントロールがいいくらいじゃ、バットに当たるんです。そのコントロールを少し削ってでも、色を出していった方が、生き残れるんじゃないかなと思います」

持ち味引き出した戸柱のリード

我が道を行く石田投手の背中を押したのが、戸柱恭孝捕手だという。
「自分のスイーパーに対して、他の捕手はきっちり構えるんですが、戸柱さんは真ん中に構えるんです。『(石田投手のスイーパーは)曲がりがでかいから、打てないから。ど真ん中に投げてこい』って言われて。そうしたらどんどん良くなっていきました。キャッチャーとしての安心感というか、自分の持ち味を一番引き出してしてくれたのが戸柱さん。自分はある程度、狙ったところに球が行くので、戸柱さんが思い描く配球とうまくかみ合ったのかなと思います」

反省も建設的に

メンタル面でも戸柱捕手の助言に助けられた。
8月23日の巨人戦、岡本和真選手に2本塁打を浴びた時のこと。
「打たれた時、全部が全部『自分の投げた球が悪かった』と悔しがるのは、シーズン長いのでしんどくなる。戸柱さんに言われて『球種の選択が違った』という風に考えるようにしました。多分、数値で見たら打たれた球も抑えた球もそれほど変わらない。ボールが悪いんじゃなくて、他に選択肢があったんじゃないか、という風に反省するようにしました。自分の球が悪かったとしても、次の試合までに突然良くなるわけじゃない。次の試合で(その球を)使わないというのは無理ですから」

人との違いを追求し、自信を深めた2年目。来季も自分の色で勝負していく。
(編集局ニュースセンター・結城啓子)
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静岡新聞SBS有志による、”完全個人発信型コンテンツ”。既存の新聞・テレビ・ラジオでは報道しないネタから、偏愛する◯◯の話まで、ノンジャンルで取り上げます。読んでおくと、いつか何かの役に立つ……かも、しれません。お暇つぶしにどうぞ!

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