
(寺田)女子ゴルフのステップ・アップ・ツアー「ユピテル・静岡新聞SBSレディース」が16日から3日間、御前崎市の静岡カントリー浜岡コースで開催されます。
(山田)ゴルフのステップ・アップ・ツアーはいわゆる登竜門と言われていますよね。
(寺田)一般的にテレビでやったりするのは、レギュラーツアーなんですね。そのレギュラーツアーの出場権を持たない選手に経験を積ませるという意味で行われるのが、この「ステップ・アップ・ツアー」です。これから飛躍してくる若手の選手が大勢出ますので、「卵」を見つけに行くつもりで見ていただけると面白いと思います。プロテストに合格し、このステップ・アップ・ツアーで力をつけ、実績を積んで行かないとレギュラーツアーには出られないんです。
(山田)ゴルフって、プロになって賞金を稼げるようになるには、狭き門なんですね。
(寺田)本当に一握りですね。静岡県勢でも有名な選手はたくさんいます。袋井市の葛城ゴルフクラブ所属の藤田寛之選手は、かつて賞金王を獲得してマスターズにも出場した一流選手で、日本ツアーで18勝しています。今は53歳になり、シニアツアーで活躍しています。
売り出し中なのは、岩崎亜久竜(あぐり)選手。清水町出身で、昨年からツアーにフル参戦して、優勝こそまだないんですが安定した力を発揮して賞金ランクが昨年3位。今年は初優勝が期待されています。
(山田)狭き門を通って活躍されている静岡県勢がいるわけですね。
(寺田)女子では、熱海市出身の渡辺彩香選手がツアー5勝を挙げ、今季も開幕戦で6位と好スタートを切っています。シーズン前に取材で話を伺ったんですけども、「30歳になる今年は集大成の年にしたい」と意気込んでいました。練習でスイングが好調だと言っていたので、今年もう一花咲かせてほしいなと期待しています。
ただ、女子の方は、ここ6、7年、プロテストに受かる本県出身の選手が出ていません。ユピテルの大会にはアマチュアで出場する選手がいるので、これからの女子選手の活躍に期待したいところです。
「3時のドリル」的に、ゴルフについて考えてみたいと思うんですけど、ゴルフは、審判員がいないんですよ。競技委員という方がいて、ルールに困ったときはどういうふうに対処したらいいかを相談することはできますが、ゴルフにおいては「自分自身が審判」なんですよ。
(山田)罰則なども自分で判断する。真摯なスポーツですね。
(寺田)ゴルフのルールは実にシンプル。ボールをクラブで打って、目標の穴に入れる。これだけです。ただ、グリーンに乗るまで、ボールに触ってはいけない。OBなどのルールは、プレーヤーを助けるためにある。打ち直しがなく、山の中や池の底までボールを探さないといけなかったらプレーするのが大変です。でも、ルールと同じように大切なのがマナーなんですね。
ルールと同等に大切な「マナー」
(寺田)自分のプレーだけじゃなくて周りを見ないといけない。他人がショットする時は、動かないし喋らないようにする、前後に立たない、スロープレーにならないように注意する、などですね。
(山田)プレー中にグローブを外そうとして、音がするので注意されるって話もありますよね。
(寺田)「喋らない」ということはルールには書いていないんですよ。「ゴルフには人格が現れる」と言いますが、ビジネスでも、大きな商談の前には、一度ラウンドして、その人が信用できる人物なのか見極めるという話も聞きます。
ゴルフがうまい下手ではなく、「信頼できるかどうか」ですね。ミスショットしてしまった後に、ふてくされたり、投げやりになったりすると、雰囲気が悪くなり一緒に回ってる人に迷惑をかけてしまいます。
(山田)僕なんか、打った瞬間からOBの方へそのまま走ってますからね。でも、難しいスポーツだからこそ面白いんですよね。
(寺田)自分自身との戦いで、他人のせいにできないんですよ。伝説の名プレーヤー、アーノルド・パーマーは、初優勝した全英オープンの時、嵐の中でプレーしたんですけど、バンカーの中で「ボールが動いた」って言って自分から申し出て一打罰を申告したんですよ。他に誰も見ていなかったので、申告しなくてもわからなかったのですが、「審判は自分」なので。
(山田)かっこいいですね。
(寺田)「球聖」と呼ばれたボビー・ジョーンズにも、同じような逸話は残ってるんですね。プロの大会でもそうですが、自分と周りの人がいいショットをすれば「ナイスショット」って声を掛ける。そういう周りを思いやる、尊重するってことは大事ですね。
(山田)ゴルフの精神は、他のスポーツにとっても学ぶところがたくさんありますね。最近はジュニアのゴルフプレーヤーたちもどんどん増えてきています。
(寺田)ただゴルフ人口はずっと減っていて、練習場などもどんどん減っている。県のゴルフ連盟の幹部の方とお話していて、子供がゴルフを始めるとすぐ「プロになるの」って、周りから聞かれるという話を聞きました。
でもサッカーをやっている子に対してはすぐ「Jリーガーになるの」って聞かないですよね。ゴルフも生涯スポーツとして、「年齢や男女関係なくプレーできるスポーツとして楽しんでほしい」という願いを持っていらっしゃいました。
(山田)楽しめるスポーツですから、子供たちにも目を向けてもらいたいです。そのためにも、ユピテル・ステップ・アップ・ツアーに注目して、ゴルフの面白さを味わってもらいたいですね。今日の勉強はこれでおしまい!