【細田守監督「果てしなきスカーレット」】復讐だけが人生か。SPACの演劇と重ねて味わう「ハムレット」の現代的解釈

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は、11月21日公開の細田守監督「果てしなきスカーレット」を題材に。11月27日に静岡市葵区の静岡東宝会館で鑑賞。動画の担当としてシャフト静岡スタジオAOI(静岡市葵区)がクレジットされている。
フリーランス転身後の長編デビュー作である2006年の「時をかける少女」を皮切りに、一貫して自分の道を切り開くヒロインを描き続けてきた細田監督。原作・脚本も務めた最新作「果てしなきスカーレット」は、シェイクスピアの「ハムレット」を下敷きに、ダンテ「神曲」の引用を交えながら進んでいく復讐譚である。
 
19歳という設定のデンマーク王国の王女スカーレット(芦田愛菜)は、シェイクスピア「ハムレット」における王子ハムレットの役回り。父を殺し、王位と母を奪った叔父のクローディアスに復讐を誓う。生きる者と死ぬ者が同居する「死者の国」で現代日本からやってきた聖(岡田将生)と出会い、価値観の衝突がありながら共に助け合って復讐を果たそうとする。
 
静岡県で2025年11月に本作が公開されたのは幸運だろう。静岡芸術劇場(静岡市駿河区)で、12月7日まで静岡県舞台芸術センター(SPAC)の「ハムレット」(上田久美子潤色・演出)が上演されているからだ。両作品を見比べることで、ハムレットの有名なせりふ「生きるべきか死ぬべきか」の異なる解釈が引き出せる。
 
SPAC「ハムレット」では亡くなったオフィーリアの細分化された魂が演じるハムレットが、「果てしなきスカーレット」ではクライマックスで主人公スカーレットが、それぞれ「生きる」についての自分の見解を述べる。「復讐は是か非か」という問いが観客に投げかけられ、「生きる」意味についても「あなたはどうですか」と問いかける。
 
「果てしなきスカーレット」は、観客に解釈を委ねる場面が多い。鑑賞後の感想もかなり広がりがあるだろう。二つの世界を行き来するという、「時をかける少女」から続く細田監督作品の基本構造は守られているが、「果てしなきスカーレット」は、従来の作品よりも意図的に不親切な構成を採用している。
 
なぜか。「生きる」意味とは簡単に答えが出るものではないからだ。SPAC「ハムレット」と映画「果てしなきスカーレット」が伝えるメッセージは、その点で共通している。「ハムレット」という戯曲そのものが内包する、時代を超えた真理でもある。
 
(は)
 
<DATA>※県内の上映館。11月28日時点
シネプラザサントムーン(清水町)
ジョイランドシネマみしま(三島市)
シネマサンシャイン沼津(沼津市)
シネマサンシャインららぽーと沼津(同)
イオンシネマ富士宮(富士宮市)
MOVIX清水(静岡市清水区)
静岡東宝会館(静岡市葵区)
シネシティ ザート(同)
藤枝シネ・プレーゴ(藤枝市)
TOHOシネマズららぽーと磐田(磐田市)
TOHOシネマズ浜松(浜松市中央区)
TOHOシネマズ サンストリート浜北(浜松市浜北区)

静岡新聞の論説委員が、静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

あなたにおすすめの記事

人気記事ランキング

ライターから記事を探す

エリアの記事を探す

stat_1