【マット・シャクマン監督「ファンタスティック4:ファースト・ステップ」】「本物のファミリー」が地球を救うヒーロー集団として活躍。沼津市周辺の大きな構造物を見逃すな

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は静岡市葵区のシネシティザートなどで7月25日から上映が始まったマット・シャクマン監督「ファンタスティック4:ファースト・ステップ」を題材に。

米マーベル・スタジオ製作による「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」の新作は、1961年に始まったマーベルのコミックシリーズを映画化した。コミック版「ファンタスティック4」は出版社マーベル中興のきっかけになった作品で、アメコミファンから映像化が待望されていた。

劇場パンフレットのアメキャラ系ライター杉山すぴ豊さんの記述によると、この作品の大ヒットでマーベルの快進撃が始まり、「ハルクもソーもスパイダーマンもアベンジャーズもX-MENも」出版できることになったという。

2021年に始まったフェーズ4以降のMCU作品は「マルチバース(多元宇宙)」というキーワードのもとで、さまざまな宇宙が同時に存在することになっている。MCU世界の無限とも思える拡張に圧倒されるが、「ファンタスティック4:ファースト・ステップ」はそうした脈絡を頭に置かなくても楽しめる一作だ。

体が伸び縮みする天才科学者リード・リチャーズ(ペドロ・パスカル)、リードの妻で物体を透明化できるスー・ストーム(ヴァネッサ・カービー)、炎と化して高速で飛行するスーの弟ジョニー・ストーム(ジョセフ・クイン)、そしてリードの親友でゴツゴツした体と怪力を誇るベン・クリム(エボン・モス=バクラック)。この4人からなる「ファンタスティック4」を名乗るファミリーチームが地球と地球人を「喰らい」にくる巨大な外敵「ギャラクタス」(ラルフ・アイネソン)に立ち向かう。

明快なストーリー、軽妙な会話劇、1960年代のデザインを取り込んだレトロ・フューチャーなセットや衣装。何の予備知識がなくても、すぐにこの世界のルールや状況が飲み込める。娯楽としての完成度が恐ろしく高い。

かといって人畜無害の「安パイ」を狙った作品ではない。絶体絶命の宇宙船の中で空中浮遊しながら出産するシーンには度肝を抜かれた。MCUの作品としては極めて異色だろう。疑似家族は多く描いてきたMCUだが、本物のファミリーがヒーローとして活躍する設定は初めてではないか。ここで生まれたリードとスーの長男フランクリンが、今後のMCUシリーズに大きな影響を与えるようだ。

物語中盤で、富士山と駿河湾が出てくる。おそらくは沼津市周辺に大きな構造物が作られる場面を見逃してはならない。

(は)

<DATA>※県内の上映館。8月5日時点
ジョイランドシネマみしま(三島市) 
シネプラザサントムーン(清水町)
シネマサンシャイン沼津(沼津市)
シネマサンシャインららぽーと沼津(沼津市)
イオンシネマ富士宮(富士宮市)
MOVIX清水(静岡市清水区)
静岡東宝会館(静岡市葵区)
シネシティザート(静岡市葵区)
藤枝シネ・プレーゴ(藤枝市)
TOHOシネマズららぽーと磐田(磐田市)
TOHOシネマズ サンストリート浜北(浜松市浜名区)
TOHOシネマズ浜松(浜松市中央区)

静岡新聞の論説委員が、静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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