
昭和30年代から令和まで。アニメで見る冷蔵庫の進化
皆さんが普段からお世話になっている「冷蔵庫」のアニメでの描写について話したいと思います。冷蔵庫は戦前から使われてきました。たとえば2023年に公開された『映画 窓ぎわのトットちゃん』、これは東京の郊外にある裕福な家庭を舞台に、当時トットちゃんと呼ばれていた黒柳徹子さんの少女時代の思い出を描いた作品です。そこに冷蔵庫が登場するのですが、当時の冷蔵庫は「氷冷蔵庫」でした。
氷冷蔵庫は木でできた枠の中に防熱材を入れ、一番上に氷を置く仕組みです。氷屋さんが運んでくる氷(1貫=約3.75kg)を入れると、その冷気が下に流れて食べ物が冷たい状態で保たれるというもの。『トットちゃん』でも、翌朝扉を開けると氷が溶けかかっている様子なども描かれています。
似た描写としては、少し後の時代を舞台にした『火垂るの墓』(1988年)があります。ここでも氷屋さんが氷を運んでおり、貧しくてつらい目にあっている清太と節子が落ちていた氷をつまむシーンがあります。あの氷屋さんも大きな氷を運んでいたので、おそらく氷冷蔵庫用のものだったのでしょう。裕福な家や海辺の店で使われていたのではないでしょうか。この氷冷蔵庫は昭和30年代まで使われ、その後は電気冷蔵庫に切り替わっていきました。
ただ、その過渡期に、もう1種類、別のシステムの冷蔵庫も使われています。2009年のアニメ『マイマイ新子と千年の魔法』(片渕須直監督)は、昭和30年代の山口県防府市が舞台です。転校してきた女の子、貴伊子ちゃんの家が医者で裕福なのですが、そこに置かれているのがガス冷蔵庫でした。
冷やす性質をもった冷媒(当時はアンモニア)を循環させて気化熱で冷やす点は現在の冷蔵庫と同じです。ただし最初の気化のためにガスを使います。そのガスでアンモニアを気化させ、それが移動していく過程で冷えるという仕組みです。
作中にも冷蔵庫のガスに火がついている描写があり、知っている人なら「あ、ガス冷蔵庫だ」と気づくわけです。昭和30年代はそういう形で、氷冷蔵庫・電気冷蔵庫・ガス冷蔵庫が併存していた時代でした。最終的には一番便利な電気冷蔵庫が主流となり、今の私たちの生活につながっていきます。
ちなみに冷蔵庫とアニメといえば、『あたしンち』127話が「冷蔵庫のあけ方」というサブタイトルです。子どもたちが頻繁に開け閉めするせいで冷えが悪くなり、母が怒るというエピソード。「20度までしか開けちゃ駄目」「1秒後には閉めろ」と言われ、子どもたちが取れないと文句を言うと、「まず開けて中を見て頭の中で場所をシミュレーションして次の1秒で取るんだ」みたいなことを言う回でした。
子どもの頃、「冷蔵庫を開けっ放しにしちゃいけない」と叱られた経験がある人も多いと思います。いかにも『あたしンち』らしいネタですよね。比較的最近の作品に見られる、現代的な冷蔵庫描写の一例といえると思います。