最近よく聞くウェルビーイングとは?日本一を目指し、静岡県が取り組む「ウェルビーイングなまちづくり」

「ウェルビーイング(Well-Being)」を見える化

静岡県は現在、県民の満足度を測る「ウェルビーイング(幸福)指標」の作成に取り組み、県民一人一人の「暮らしやすさ」と「幸福感」を見える化することで幸福度日本一を目指しています。静岡新聞社・静岡放送では「しずおかウェルビーイングウィーク」と題して、各メディアを通じ、「ウェルビーイングとは何か」を発信していきます。

詳しい話を一般社団法人スマートシティ・インスティテュート代表理事で静岡県フェローの南雲岳彦さんに聞きました。聞き手は「鉄崎幹人のWASABI」パーソナリティの鉄崎幹人、SBSアナウンサーの堀葵衣。

<目次>
・ウェルビーイングとは?
・ウェルビーイングなまちづくり
・幸福指数はどうやって測るの?
・静岡県の幸福度合いや目指すべき場所
・企業や個人でできること

ウェルビーイングとは?

鉄崎:「ウェルビーイング」とは何か教えてください。

南雲:日本語では一般的に「幸福」と訳されることが多いです。少し厳密な言い方をすると、身体・精神・社会的に良い状態のことをいいます。すこやかで、孤独でなく、成長実感を感じられる状態のことです。

鉄崎:なるほど。社会情勢も関係するので、国によっても幸福度は違うんですね。どうして今「ウェルビーイング」なんですか。

南雲:元々、幸せは「豊かさ」だと考える時代が長かったと思います。しかし先進国を中心に、生活が豊かになってきたら、お金持ちが必ずしも幸せではないということが分かってきたんです。

物の豊かさだけでなく、人間関係や生活環境を広く見ないと、人の幸せは分からないという考えが一般常識化されてきたということなんです。

ウェルビーイングなまちづくり

南雲岳彦さん 撮影:静岡新聞写真部・小糸恵介

堀:深いですね〜。南雲さんは「ウェルビーイングなまちづくり」の第一人者ですが、これはどんなアプローチですか。

南雲:まちづくりと言うと、自治体や企業でいろいろな取り組みをしますが、行うことが目的ではなく、実行した結果、「人々が幸せだと言ってくれるまちづくりをしましょう」という考え方です。

堀:まちづくりから幸福度を上げていくことは大事なことですか。

南雲:はい。交通事故が多い、犯罪が多い、買い物に不便、病院がない。そんなまちには住みたくないですよね。地域に頼れる人がいるのか、自分が学びたい時に学ぶ場所があるのか、なども重要になってきますが、私たちが幸せに生きていくために必要なインフラや人間関係を築いていくことが「ウェルビーイングなまちづくり」になると思っています。

鉄崎:そこに住まう人が「このまちっていいな」と思う、住まう人同士の関係性も大事ですね。

南雲:信頼している人が近くにいることや、何かあったら助け合える関係があることも重要なポイントです。

鉄崎:南雲さんが考える幸福度の高いまちについて教えてください。

南雲:人によって違いますが、僕は学びが多いところが好きなので大学に近くて生徒とコミュニケーションがとれる、自分のやりたいことがある場所が幸せなまちだと思います。

幸福指数はどうやって測るの?

鉄崎:幸せを指数で表すことは難しいことだ思いますが、幸福指数はどうやって出していくんですか。

南雲:2つ方法があります。一つはアンケートでさまざまな項目について、市民にどのくらい満足しているのか聞いて回るやり方です。

市民がまちのどんなところに魅力を感じ、どこに不満を感じているのかを指数で主観的に表すことができます。もう一つは市役所や公共が持っているオープンデータで客観的に測ることができます。日本の「ウェルビーイング指標」は主観と客観の両方で測ってそのバランスを見ていこうとアプローチをとっています。

堀:どうしてこの指標作りに取り組もうと思ったんですか。

南雲:テクノロジーを導入することを前提でまちづくりを考えていたところ、テクノロジーを入れることの方が目的になってしまったことがありました。
テクノロジーを入れても本当に幸せなのかどうか忘れてしまいそうになります。そんな中、生活実感として「いいまちになった。私は幸せだ」という言葉が出てくることの方が大事だと気付かされたんです。

静岡県の幸福度合いや目指すべき場所

鉄崎:現在の静岡県の幸福度合いの状況はどうですか。

南雲:静岡県はいろいろなエリアがありますが、自然や食生活が豊かで楽器など製造業も発達している文化の土壌やポテンシャルが高いという印象です。

堀:今後、静岡県が目指していくべき場所についてはいかがでしょうか。

南雲:これから県庁職員や県知事のもとでみんなで考えていくことになると思いますが、「ウェルビーイング指標」を使って静岡県全体や傘下の市町村の幸福度合いを見える化できます。そこで自分たちは、どこをとがらせてどこを守っていくことが幸せなのかをみんなでディスカッションする必要があると感じています。

企業や個人でできること

鉄崎:企業としてできることはありますか。

南雲:今は社会課題を解くことがビジネスにもつながっています。ビジネスはその土地の一員としての社会的責任も伴うので、市民がどういうものを欲しているのか「ウェルビーイング指標」を見ながら考えることも大事だと思います。

鉄崎:堀ちゃんが思う「ウェルビーイングなまち」は?

堀:みんな仲が良いまちです。地域のイベントや地域の人同士の交流があって、自分の地元が好きだと思えて、一度離れてもまた戻ってきたいと思える場所が素敵だなと思います。

鉄崎:最後に私たち一人ひとりができることを教えてください。

南雲:自分はどんなまちが幸せの場所なのか想像することから始めてください。「ウェルビーイング指数」を見て自分ごととしてまちづくりに参画することが長寿なまちづくりにもつながると思います。

※2025年3月17日にSBSラジオ「鉄崎幹人のWASABI」で放送したものを編集しています。
今回、お話をうかがったのは……南雲岳彦さん
一般社団法人スマートシティ・インスティテュート代表理事で静岡県フェロー。
デジタル庁田園都市Well-Being指標委員会など国の審議会の委員を歴任。
浜松市など自治体の政策アドバイザーも務める。

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