ヤマメ祭りのお噺し

2023年10月1日放送の「静岡市歴史めぐり まち噺し」は、井川のヤマメ祭りのお噺しです。
語り:春風亭昇太

合併により静岡市葵区の一部となった大井川の最上流部、かつての井川村田代地区は、南アルプスの広大な山々で大規模な焼畑農業を営んでいました。

この地区の氏神が諏訪神社。毎年8月26日、27日に行われる諏訪神社の祭りは、「ヤマメずし」が奉納されることから「ヤマメ祭り」と呼ばれています。ヤマメずしの材料となるのが焼畑で作られる粟。この地区で生業としての焼畑農業が行われなくなっても、祭りのヤマメずしのための粟は焼畑で作り続けられてきました。

ヤマメ祭りに先駆け、8月20日には魚釣り祭りが行われ、普段は禁漁区とされている明神谷で、ヤマメが釣り上げられます。このヤマメを塩漬けにしておき、ヤマメの腹に粟をつめてヤマメずしが作られます。「鮒ずし」や「へしこ」など、日本古来の「なれずし」は全国各地で伝承されていますが、粟で作るものは珍しいようです。

ヤマメ祭りは、村の安泰を願い、主食であった粟の豊作と貴重なタンパク源であったヤマメの豊漁を祈願する祭りとして受け継がれてきました。8月26日から行われる神事では、井川に伝わる神楽が奉納され、夕日が沈むころ、ヤマメずしが諏訪神社に供えられます。

27日の本祭りが終わると、その「ヤマメずし」が氏子たちに分けられます。山に暮らす人々の伝統的な知恵と祈りが凝縮された全国的にも珍しい民俗行事であるヤマメ祭りは静岡県指定無形民俗文化財になっています。

静岡市歴史めぐり まち噺し 今日のお噺しはこれにて。

静岡市の観光親善大使でもある春風亭昇太師匠の語りで、歴史や文化、特産品など、静岡市の魅力を紹介するミニ番組です。(毎週日曜日ひる12時54分放送)

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