語り:春風亭昇太

静岡市清水区由比北田地区にある北野天神宮。
その境内にある津島神社では「由比北田の天王船流し」と呼ばれる祭りが、毎年7月の第3土曜日に行われます。
「由比北田の天王船流し」は平成26年3月に、国の記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財に選択されました。
祭りを前に麦藁と竹で作られるのが、中央に大きな帆を立てた長さ4メートルほどの「天王船」。
祭り当日には、帆柱のてっぺんに「ゴヘイ」といわれる津島神社の神札や、紙垂をつけた榊、ほおずき提灯が飾られます。
津島神社の総本社は、愛知県津島市にあります。
全国に約3,000の分霊社を持ち、疫病退散や厄除けの守護神として、広く信仰されてきました。
総本社で行われる「尾張津島天王祭」がこの由比北田の天王船流しのもとになっているとされています。
祭りの当日、天王船を担いだ一行が、北田地区の家々を廻ります。
地区の人たちは家の前で天王船を出迎え氏子総代にゴヘイで祓ってもらいます。
人々が自分の厄を移した「オスガタ」と呼ばれる紙製の人形が、籠に集められていきます。
地区の家々をまわり終えると、いよいよ船流しです。
天王船は、由比川の河口から浜に出たところで、厄を移した「オスガタ」がのせられ松明に火を点けて、沖に向かって流されます。
天王船はオスガタとともに厄を海へ流し去ってくれるのです。
静岡市歴史めぐり まち噺し 今日のお噺しはこれにて。