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日本をこよなく愛すアメリカ人言語学者のアンちゃんから見た、日本語の不思議

外国人にはカタカナやオノマトペは難しい!?

今回は、外国人の目から見た日本の話です。私たちが普段何気なく使っている日本語ですが、外国の人から見ると、知らなかった気づきがありますよね。北九州市立大学准教授で言語学者、タレント活動もしているアン・クレシーニさんに、SBSアナウンサー牧野克彦がお話をうかがいました。
※12月21日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

牧野:改めて、アンちゃんのプロフィールを紹介します。アン・クレシーニさん(以下アンちゃん)は、アメリカ・バージニア州出身のアメリカ人。現在は福岡県宗像市在住です。流暢な博多弁を駆使し、日本と日本語をこよなく愛するアメリカ人言語学者です。専門は和製英語。バイリンガルブロガー、テレビコメンテーターとして多方面でアンちゃんとして活動されています。

昨年12月には、面白そうな本を執筆!「アンちゃんの日本が好きすぎてたまらんバイ!」(リボンシップ・2021年12月18日発売)。これはどういう本なんですか?

アンちゃん:2018年から西日本新聞で連載をしています。その連載の1回から100回までが本になりました。

牧野:「アメリカ人は、ウルトラマンという言葉が言いにくい」というので笑っちゃいました。

アンちゃん:もちろん英語の発音ならいいのですが、カタカナのウルトラマンは難しいです。

牧野:ゆっくりカタカナを重ねていくような言葉って言いにくそうですね。アンちゃんのお気に入りのエピソードはどれですか?

「飲まない」と言わない日本人

アンちゃん:日本語が好きすぎて、朝から晩まで日本語のことしか考えていません! 最近思ったのは「飲み会」について。日本人は飲み会が大好きですが、私は日本に来たばかりの頃はお酒を飲まなかったんです。なので、「お酒を飲まない」と言いました。そしたら、まわりの人が「えっ? 何で飲まないの?」と混乱している顔をしたんです。

私が気づいたのは、日本人は「飲まない」と言わないこと。「飲めない」と言うんですよね。「飲めない」という言葉は、飲んだら病気になるとか倒れるという意味だと思ったんです。どんだけ日本人はお酒に弱いんだと(笑)。「飲みたくない」そして、明日検診があるから「飲めない」「飲まない」、その全部のことが「飲めない」という表現に含まれている。

牧野:あと、自分の意志ではなく「飲めない」。「飲めない」から「飲まない」んですよと、責任をほかに持っていっている感じもしますね。

アンちゃん:「飲まない」だと理由を説明をしないといけない。だけど「飲めない」なら、めんどくさい説明はいらないから、すごく便利な日本語だなと思いました。

カチカチ、ギリギリは、外国人にとってはただの音!? 

牧野:日本人はそこは意識してないんですよ! そういうところもアンちゃんは気づいてくれるんですね。私が面白かったのは、歯医者で「カチカチして」とか「ギリギリして」の意味が分からなかった話です。

アンちゃん:そうなんですよ。オノマトペ、擬態語、擬音語、擬声語などが日本語は英語の8倍もあるんです。日本人は無意識に使っていますよね。小さな頃からベタベタとかヌルヌルなど、親に言われているから自然に覚えるんですが、私たち外国人にとってはただの音なんです。何も意味が入っていません。だから名詞や動詞、形容詞と同じように覚えるしかないんです。

牧野:じゃあ、ギリギリしては、歯と歯をすり合わせるイメージで覚えていったんですか?

アンちゃん:だから歯医者でカチカチしてといわれたら、10年くらいよくわからなかったです。縦に合わせるのか横にするのかどっちだったんだっけ?とか。日本人は無意識に使うから、「スーパーマーケットはどこですか?」と聞くと、あれはバーッと行ってキューっとなってるところを曲がってとか話すんですよ。

牧野:オノマトペだけで普段済ませている人もいますからね。外国人とのコミュニケーションで気をつけたいところですね。そういったエピソードがたっぷり入った本なので、みなさんも、ぜひ読んでみて下さい。そして、リスナーさんから「日本で使われている印鑑は、外国人からみたらヘンに思っているのでしょうか?」という質問がきていますが?

アメリカでは印鑑ではなくサインが信用される

アンちゃん:ヘンというか、すごく不便なものだなと思います。実印を失くしたり、忘れたら仕事ができなくなる。私は一度実印のゴムが外れて使えなくなったことがあるんですが、とんでもないことになりました。すべての手続きをやり直すことになったんです。

牧野:アメリカだと実印はないんですか?

アンちゃん:サインしかないんです。日本に来るまで、見たこともありませんでした。サインの方が信用できると思われています。日本では会社によってハンコの作り方も違うんですよ。例えば、私のハンコは下の名前のアンで彫ってあるのですが、他の会社では下の名前ではダメだと言われて作り直しました。だから、正直すごく不便なものだなと思います。でも、ないと生活できないから、「アンちゃんもハンコもってますか?」と聞かれると、「ないと生活できないやろ」といつも答えます。

牧野:本を見ても思うのですが、アンちゃんは日本の変なところが好きなんですよね。

アンちゃん:そうなんですよね。文化の違いが面白すぎて、アメリカはいいとか、日本が勝ちとかではなく、フラットに面白いところと違いを楽しむのが好きなんです。日本のクリスマスとアメリカのクリスマスは全く違うけど、それもよかろうという考えがあります。そんな風に思うと、生活が楽しくなります。

牧野:そこまで日本を好きになったきっかけはありますか?

アンちゃん:うまく説明できないけれど、日本語を話しているとすごく幸せな気分になるんです。英語の方が上手いのですが、日本語を話しているときの方が自分らしく話しているし、言いたいことを表せていると感じるときもあります。

牧野:積極的に日本の文化に入っていって、PTAにも参加したりね。最後に、静岡のみなさんにメッセージをお願いします!

アンちゃん:静岡大好きです。三味線を習っているんですが、今習っている曲は「ちゃっきり節」です。

牧野:渋い! 正直、「ちゃっきり節」の良さが、日本人なのにまだ分かっていないです。

アンちゃん:ダメですよ!すてきな曲です。お茶の魅力をすごく感じますね。歌いながらいろいろ想像できます。

牧野:茶畑の風景やお茶の香りなどが感じられるんですね。また静岡に来て、お茶も味わってください! あと、もうひとつ本で面白かったことを。片付けのプロの近藤麻理恵さん、こんまりさんがアメリカで大人気で英語で動詞になっちゃっているらしいじゃないですか。

アンちゃん:そうなんです! アメリカでは、konmariが断捨離の意味になってきたんです。だから「I konmaried my house.」といったら、こんまりメソッドを使って断捨離しましたという意味になります。

牧野:自分の名前が動詞になるなんてすごいですね。アンちゃんも、動詞になるのをめざしてください(笑)! ありがとうございました!
今回お話をうかがったのは……アン・クレシーニさん
アメリカ・バージニア州出身のアメリカ人。福岡県宗像市在住。流暢な博多弁を話し、日本と日本語をこよなく愛すアメリカ人言語学者。専門は和製英語。バイリンガルブロガー、テレビコメンテーターとして多方面に活動。著書に『ペットボトルは英語じゃないって知っとうと!?』(ぴあ)など。

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