「いろんな発信をしなければ最後には忘れ去られてしまう」描けぬ未来像…元ハンセン病患者の“終の棲家”「国立駿河療養所」開所80年【静岡】

静岡県御殿場市にあるハンセン病療養施設「国立駿河療養所」が開所80年となり、6月10日、記念式典が開かれました。元ハンセン病患者の高齢化が進む中、施設の在り方が問われています。

人里離れた山の中に建つハンセン病患者の療養施設「駿河療養所」は10日、開所80周年となりました。記念式典では、厚生労働大臣の謝罪が代読されました。

<厚生労働省国立ハンセン病療養所対策室 北礼仁室長>
「国の施策がハンセン病に対する社会の厳しい差別、偏見を生み、ハンセン病の入所者や家族の皆様に筆舌を尽くし難い苦痛と苦難を与えた事実について厚生労働大臣として真摯に反省し、深くお詫びするとともに多大な苦しみの中で亡くなられた多くの皆様に哀悼の意を捧げます」

ハンセン病は、「らい菌」によって感染し、熱い、冷たいなどの感覚を失うほか、治療が遅れた人は顔や手足に後遺症が残ることが多く、それが偏見につながりました。

療養所は、国の間違った政策により、ハンセン病患者を隔離するための施設として使われました。多くの入居者は、偏見や差別により故郷に戻れず、現在も全国で639人の元患者が「終の棲家」として14の療養所で暮らしています。(2025年5月末時点)

駿河療養所の自治会長を務める元ハンセン病患者の小鹿美佐雄さんは、「ハンセン病そのものがもう忘れられた病気という感覚が非常に強いと思う。新型コロナが出た時に、国のやることを見ているとハンセン病と同じことをやっている。自分たちが忘れ去られた存在だと思うと非常に寂しい」と語りました。

最も多い時には471人いた入所者は今や32人に、平均年齢は87歳です。

<国立駿河療養所 小鹿美佐雄自治会長>
「できるだけ、いろんな発信をしなければ最後には忘れ去られてしまうだろうという感覚がある。その辺をどうしていくか正直言って分かっていない」

入所者の高齢化が進む中で、豊かな暮らしの維持と歴史の継承がいま、課題となっています。全国の療養所をめぐっては、岡山の長島愛生園が世界遺産登録を目指して外国人向けツアーなどの活動をしているほか、東京の多磨全生園では園内に保育園を設け、地域の子どもたちを受け入れています。

駿河療養所も社会との共生を目指していますが、まだ具体的な将来像は描けていません。

<国立駿河療養所 北島信一所長>
「ハンセン病の歴史を伝えるような施設を作っていこうという話はあって、かなり計画としてあるので進めていきたい。地域の方との交流に関しては入居者の方も望んでいるのでもっともっと増やしていきたい」

国立ハンセン病資料館の内田館長は、ただ「開かれた施設」にするだけでなく、その差別や偏見の歴史を伝えていかなければいけないと指摘します。

<国立ハンセン病資料館 内田博文館長>
「どうして入所者の方はこういう生活を送らざるを得ないのかということを考えていただくとか、あるいは入所者の生活の問題と実は我々の生活の問題と関連してるのではとか、そういう形で結び付けていただくという意味での開き方ではないといけないと思う」

「あしたを“ちょっと”幸せに ヒントはきょうのニュースから」をコンセプトに、静岡県内でその日起きた出来事を詳しく、わかりやすく、そして、丁寧にお伝えするニュース番組です。月〜金18:15OA

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