【国立印刷局静岡工場80周年】静岡市内でお札が作られている!? 新紙幣には驚きの技術が。工場の歴史や紙幣の秘密を紹介!
(橋本)静岡市駿河区の国立印刷局静岡工場で、12月7日に創立80周年記念式典が開かれました。11月には市内のマスコミ向けに見学会を開いてくださり、その見学会に参加させていただいたこともあって、この話題を取り上げます。
普段、皆さんが使っているお札を作ってる工場が静岡市内にあるっていうことは、案外、知られてないのかなと思いますが。
(山田)僕も聞いたことあるけど、どこにあるとか全然知らなかったです。
(橋本)駿河区の国吉田にあるんですけども。独立行政法人の国立印刷局という組織があり、国内に6カ所の工場と1カ所の研究所があるんですね。お札を刷るのはそのうちの4工場で、静岡工場はその中の一つということです。
(山田)あ、工場は1カ所じゃないんですね。
(橋本)静岡工場は1943(昭和18)年の6月開設で、今年80周年を迎えたということで記念式典が行われました。1943年は、ちょうど太平洋戦争の真っ最中ですね。
日本は国外の占領地にたくさんの兵隊を送っていました。外地でも兵隊は物を食べるし、色々な物資を手に入れなくてはやっていけません。そのために軍票というものを日本政府の信用で出して、それを現地で払って物資を買っていたんです。
(山田)向こうで使える小切手ということですね。
(橋本)軍票を作って現地へ送らなくてはいけないので、港が近くにあるということで、清水港に近い国吉田が選ばれて、そこに工場が設置されたということです。
国立印刷局の工場としては、東京、小田原に続いて3番目だったそうです。このあたりの経緯は、12月5日付の静岡新聞に掲載した宮本義政工場長のインタビュー記事で紹介しているので、もし手元にあれば読んでいただきたいと思います。
造幣局が硬貨、印刷局が紙幣
(山田)「国立印刷局」。あまり聞き慣れないですよね。(橋本)お札の他にも、国が機関紙として休日以外毎日発行している「官報」を印刷しています。海外旅行のときに携帯するパスポートや、切手、印紙・証紙なども製造しています。
(山田)そうなんですね。それも全部ここで印刷してるんだ。
(橋本)ルーツをたどると、国立印刷局は明治4年に創設され、当時はまだ大蔵省の中に設けられた機関でした。大蔵省紙幣司というのが始まりだということで、それができたばかりのときに責任者を務めたのが、後に実業家に転じ、日本の資本主義の父と言われるようになった渋沢栄一さんです。
僕が見学に行ったときに工場長がお話されたんですが、国立印刷局は市民にあまり馴染みがなく、よく造幣局と間違われるそうです。造幣局は硬貨を作っています。
(山田)お札を作ってるのが印刷局で、造幣局とは違うんですね。
(橋本)間違えられるので、もっと知ってほしいけど、セキュリティも大事な施設の性格上そんなに派手な宣伝をするところでもないということで、周知が難しいようです。
来年からの新紙幣の顔は…
(橋本)日本のお札というと最近よくニュースで報じられているのでご存知かもしれませんが、今の紙幣が来年7月に新しい紙幣に変わります。新しいお札の顔になる歴史上の人物3人、わかりますか?(山田)それこそ渋沢栄一が入るのは知ってます。あと、誰でしたっけ?
(橋本)1万円札が、渋沢栄一さん。2021年の大河ドラマで主人公になったので来歴に詳しい方もいるかと思いますが、元々徳川慶喜の家臣で、慶喜が将軍を退き静岡にいたときに静岡藩に勤めていたことがあり、静岡にもゆかりの深い人ということです。
5千円札は、東京にある津田塾大学を創設し、女子教育に力を入れた津田梅子さん。千円札は、近代日本医学の父と言われる微生物学者の北里柴三郎さん。もう、紙幣のデザインが公開されています。
今の1万円札の福沢さんは1984年から、5千円札の樋口一葉さんと千円札の野口英世さんは2004年からということで、それぞれ約40年、20年と経ってますので、見慣れていると思います。それがいよいよ来年の7月に変わるんですね。
(山田)ちょっと、寂しいですよね。だってもう「諭吉」とか言えなくなりますもんね。
よく「諭吉が飛んでっちゃった〜」とか言うじゃないですか。
(橋本)「栄一」ですね(笑)。
新紙幣にも、世界に誇る技術が注ぎ込まれている!
(山田)実際に工場見学されてどうだったんですか。
(橋本)出入りの時に厳しくチェックされ、やはりセキュリティがちゃんとしているなという印象でした。あとは、その技術の高さについて色々教えていただきました。
もう既にですね、諭吉さんは刷られていません。
(山田)もう、いないんですね!
(橋本)新しいお札、栄一さんの印刷が本格化してます。諭吉さんのお札も、世界で最も偽造しにくい紙幣の一つと言われていますが、新しい紙幣にも、新しい技術がふんだんに注ぎ込まれているそうです。
「透かし」が今よりさらに高精細になっていたり、ホログラムは見る角度によって栄一さんの顔の向きが変わったりします。あと、目の不自由な方でも手で触るとどの紙幣かわかるように斜線マークを入れています。金額の文字も今までより大きくして表裏に入れ、見やすくしているなど、使いやすいように工夫しているということです。
日本の偽造防止技術が優れているということで、外国に比べて「改刷」、つまり新しいお札に改めるスパンが長いんだそうです。
(山田)なるほど、偽札を作りにくいからですね。
(橋本)そういうホログラムや透かしなどの技術があるんですが、その技術の担い手として、印刷局には美術系の教育を受けた「工芸官」という方が30人いるそうです。いつ改刷になっても対応できるように、日々その技術を磨いているんです。工場長のインタビューの中で、工芸官は1ミリの幅に11本線が引ける技量を持っているとおっしゃってました。
ちょっとどうやってやるのか想像できないんですけど、機械が優れていて技術が向上していく部分もあるし、人間の技術で支えられている部分もあるということなんだと思いますね。
(山田)それが、静岡にあると。
(橋本)せっかく静岡にあるので、「市民にもっと親しみを感じてもらえたらいいな」と工場関係者は考えているようです。来年新しいお札になるので、静岡にそのお札を刷るところがあるんだなということをちょっと知ってもらえたらということで、今日取り上げてみました。工場見学の受け入れもやっているそうなので、そういう募集があれば応募してみていただくのもありかなと思います。
(山田)一度見てみたいですね。国立印刷局静岡工場80周年ということで、皆さん身近にありますから、ちょっと見学してみてはいかがでしょうか。今日の勉強はこれでおしまい!
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