「商売として成り立たない」魚市場に並んだ “シラス” わずか3かご 黒潮大蛇行が終息の兆しで静岡・御前崎魚市場「期待したい」そもそも大蛇行とは?

気象庁は5月9日、7年9か月にわたって続いていた「黒潮」の大きな蛇行が終息する見通しであると発表しました。記録のある1965年以降では最も長い間続いた大蛇行。終息すれば、さまざまな影響を及ぼす可能性があります。

「黒潮大蛇行」とは、どういったものなのでしょうか。

<LIVEしずおか 久留嶋怜気象予報士>
「そもそも黒潮がなぜ日本の太平洋側を流れてくるのかと言いますと、黒潮は暖流ですので南の赤道域の海水が流れてきています。南から地球の自転や風によって西に流れてきた海水が地形的にもう西に進めなくなることで北上してきて、しばらく日本の沿岸部を進んでくるんですが、紀伊半島沖で一度大きく曲がって房総半島沖で再び北上してくる、これを黒潮大蛇行といいます。この蛇行は渦や流れの強さなどが影響してくることが分かっているんですが、この状態が過去最長となる7年9か月続いてきました。この黒潮大蛇行が終息する兆しを見せているということなんです」

海水温が上がることで、これまで大きな影響を受けていたのが漁業です。静岡県内の関係者からは、期待の声が多く聞かれました。

<社会部 大西晴季記者>
「午前9時半です。いまシラスを乗せた船が港に戻ってきました」

静岡県の御前崎港です。

<社会部 大西晴季記者>
「まもなく競りの時間ですが、本来であればこの辺りにシラスが入ったかごがびっしり並ぶのですが、きょうはなんとわずか3つしかありません」

多い時には、200から300ものかごが並ぶという御前崎魚市場ですが、きょうは、7隻のうち、3隻しかシラスが獲れませんでした。

<仲買人>
Q.こんなに少ないことってある?
「いや、ないですよ。いくら少ないって言ったって、もうちょっとは普通ある」
「これしかないって商売として成り立たない」

静岡県内のシラス漁はここ数年、深刻な不漁が続いています。

県内のシラスの水揚げ量の推移をみると、10年前には、8500トンほどありましたが、黒潮の大蛇行が始まったとされる2017年以降はその量が急激に低下。県の水産・海洋技術研究所は、大蛇行がシラス不漁の原因のひとつだとみています。

影響が出ているのはシラスだけではありません。定置網漁では、温かい海に暮らす魚がかかるようになった一方、これまで獲れていた需要の多いアジやサバなどが減ったことで、漁師からは悲鳴が上がっています。

<定置網漁師>
「(定置網漁は)来る魚を獲るから、難しいよ、そりゃあ。(漁師を)辞めるしかなくなっちゃうわな、漁獲量がなくなってくれば」

そうした中、明らかになった黒潮大蛇行の「終息の兆し」。関係者から聞こえるのは、期待の声ばかりです。

<シラス漁師>
「そりゃあ、上がっていってほしい」
「自然なことだから、期待はするけど、昔のように戻ってくれるように」

不漁の影響で県外産に頼っていたという静岡市葵区の鮮魚店も、県内産シラスの復調に期待を寄せます。

<鮮魚魚長 伊藤雄哉専務>
「地元の人たちが今まで食べていたもの、馴染んでいるものが、たくさん売れれば、それにこしたことはない」

専門家は今後、多少は海水温が下がるとみる一方、漁獲量が以前の状態に完全に戻るのかはわからないと話します。

<海洋研究開発機構 美山透主任研究員>
「地球温暖化しているので、全く元通りに冷たくなるわけではないとは思いますけれど、今の極端な状況というのはある程度緩和されると思う。黒潮大蛇行が原因だったとすれば、少し期待できるところ。断言はできないですけれども、期待したい」

「あしたを“ちょっと”幸せに ヒントはきょうのニュースから」をコンセプトに、静岡県内でその日起きた出来事を詳しく、わかりやすく、そして、丁寧にお伝えするニュース番組です。月〜金18:15OA

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