「すごい迫力で美しい迫力、上からも見てみたいなと思った」
浜松市役所に集まったファンたちの目の前に現れた巨大な姿。それは、世界的人気アニメシリーズ「エヴァンゲリオン」の象徴とも言える初号機の立像だった。高さ約6メートルのこの立像は、まさに圧巻の一言に尽きる。
「残酷な天使のテーゼ」が鳴り響く市役所
休日にもかかわらず、多くの人々が市役所に詰めかけた。そこには、あの心躍るテーマ曲「残酷な天使のテーゼ」が流れ、まるでアニメの世界に迷い込んだかのような空間が広がっていた。
この光景は、浜松市と「エヴァンゲリオン」のコラボレーションプロジェクト「シン・ハママツ計画」の幕開けを告げるものだった。しかし、なぜ浜松市なのか?その謎を解く鍵は、市内を走る一本の鉄道線にあった。
エヴァの聖地となった天竜二俣駅

天竜浜名湖鉄道の天竜二俣駅。この駅が「シン・エヴァンゲリオン劇場版」のモデル地の一つとなったことが、今回のコラボレーションの発端だった。
目玉の一つがスタンプラリー。浜松市内に設置された10のポイントでスタンプを集めると、非公開となっている限定ステッカーがもらえる。エヴァ人気にあやかり、市内をめぐってもらう狙いだ。
ファンの熱狂と市の期待
プロジェクト開始早々、熱心なファンたちの姿が目立った。「終わったよ。やっと終わった」と、午前中のうちにすべてのスタンプを集め終えた強者も現れた。その熱意は、市の期待を裏付けるものだった。
中野祐介浜松市長は、このプロジェクトへの期待を次のように語る。「エヴァンゲリオンゆかりの地、浜松を回っていただくとともに、それ以外にも浜松のいいもの、良いところをぜひご堪能いただける機会にしていきたい」
市は、エヴァファンだけでなく、大阪・関西万博を目的に来日する外国人観光客も取り込みたいとしている。アニメの力を借りて、浜松の魅力を国内外に発信する狙いだ。
「ロンギヌスの槍」をめぐる課題

しかし、このプロジェクトには課題もある。天竜浜名湖鉄道の敷地内に設置された「ロンギヌスの槍」は、ファンにとって垂涎の的だ。しかし、この槍は通常立ち入り禁止の転車台のそばにあり、有料ツアーに参加した人だけが見学できる。
天竜浜名湖鉄道営業課の渥美敏和課長代理は、悩ましい状況を語る。「見てはいただきたいものなので、ツアーを毎日のように組んでいるので、ぜひそちらに参加していただき多くの人に見てもらいたい」
実際、取材中にも敷地内をのぞき込み人の姿があった。「映画でも話題になっていたので見にこようと」「ニュースで見た感じでは人が近くにいたので、行っていいのかなと」と、ファンの熱意との狭間で困った状況がある。
また、混雑が目立つ中で、行政運営に影響が出ないように、浜松市は窓口が混みあう週明けなどは交通整備の人員を増やすとしています。
未来へ向かう「シン・ハママツ計画」

「シン・ハママツ計画」は、早くも過熱気味だ。市役所に詰めかけた人や、スタンプラリーに挑戦する人々の姿が、その人気ぶりを物語っている。
このプロジェクトは来年2月まで続く予定だ。市は更なる仕掛けを用意しているという。果たして、エヴァンゲリオンと浜松市のコラボレーションは、どのような展開を見せるのか。
アニメの世界と現実が交錯する「シン・ハママツ計画」。浜松の街に降り立った巨大な初号機の立像。その眼差しは、未来の浜松へと向けられているようだ。