能登半島地震から1年、阪神淡路大震災から30年など、災害を振り返る重みが増す中で、静岡でひとつの紙芝居が完成しました。テーマは「妖怪と防災」。民話から災害の教訓をひも解き、若い世代に伝えていく学生たちの取り組みです。
「『おーい、ナマズよ』みんなで要石を動かすと『ガタガタガタ』。地面が大きく揺れました。石の下からナマズが現れました」
防災教育について学ぶ静岡大学の学生たちが3月22日、子どもたちに読み聞かせたのは、オリジナルの紙芝居です。タイトルは『なんかようかい?ぼうさい妖怪!?』。
女の子が河童や鬼などとの出会いを通して、妖怪が災害の危険性を伝えてくれていることに気付くというストーリーです。
子どもたちに防災に興味をもってもらおうと妖怪の民話を取り入れました。
<静岡大学大学院 小川日南さん>
「この木の根元にあるのが要石です」
静岡大学大学院3年生の小川日南さんは、地域に伝わる妖怪の民話から災害の歴史を研究しています。紙芝居で取り上げた民話は、実際に静岡県内で伝わってきたもの。
静岡市清水区の神社にある石は「要石」と呼ばれ、地震を起こすとされる大ナマズの頭を押さえているといいます。
<小川さん>
「この石があるおかげで、昔からどんな天変地異にも微動だにしないと伝えられている」
小川さんの調査では、河童は大雨や洪水、龍や大蛇は土砂災害などの歴史と結びつき、ハザードマップでも被災が想定される区域だと分かりました。
<小川さん>
「復興までまだ時間がかかるという現実を目の当たりにして、正直驚きやショックがあった」
小川さんはこの日、高校生に能登半島地震の被災地でボランティアをした経験を伝えました。
<小川さん>
「妻が震災後、家の中で眠れなくなってしまった。今は家の中でなくて外にあるキャンピングカーの中で、妻だけ寝ているということを(被災者が)ポツリと話してくださった」
南海トラフ地震が迫る中で、防災をいかに自分事にできるか。小川さんは若い世代がカギになると考えています。
<小川さん>
「小さい子から高校生までが声を上げることによって、おじいちゃんやおばあちゃんであったり、もっと上の世代の人たちも引っ張る力があると思うので、若い世代に伝えたい」
小川さんたちの思いが形になった紙芝居。3月22日、静岡市立中央図書館に寄贈しました。
<子どもたち>
「楽しかった」
「妖怪がやさしかった」
母親「静岡で起こりうる災害をこういう紙芝居で教えてくれるので、わかりやすくてよかった」
<小川さん>「今後は、静岡県内で紙芝居をより多くのお子さんや親御さんに手に取ってもらって、楽しみながら、静岡のリスクについても、災害と一緒に暮らしてきた経験を知ってもらえたら」
子どもたちが自分の身を自分で守れるように。地域に伝わる民話と学生たちの熱意が静岡の防災力を高めます。
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