
米国でデザイナーとして、ゲーム会社や半導体装置メーカーの商品デザインを手がけてきたリーさん。日本で販売予定の製品は、アニメの宇宙基地をイメージしたプラモ展示台や、斜めにカットし塗料が取り出しやすいケースなど近代的かつ機能性を備えたデザインが特徴。ウェブマーケティングの知見を持つ妻マリンダさんが、米国時代の取引先やプラモファンなどのコミュニティーへ販促を予定するが、認知度に乏しい日本では、顧客網構築が大きな課題となる。
販路開拓へ夫妻が注目するのが日本の“オタク層”だ。矢野経済研究所(東京都)によると、2024年度の「オタク市場」はアニメなど主要12分野でいずれも成長が予測され、プラモデルやフィギュア分野のオタク層は、年間平均3万~5万円の購買力を持つという。ニッチな市場のファン獲得が事業の鍵を握る。
夫妻は生産拠点整備へ、24年6月に外資系企業の誘致を支援する県国際経済振興会(SIBA)や市産業基盤強化本部の仲介を受け、建築会社が所有する延べ約625平方メートルの2階建て倉庫を事務所兼作業場として賃借。25年1月にカリフォルニア州で起きた火災の影響で輸送が遅れていたプラスチック加工用射出生成機が2月中旬に届き、ようやく生産態勢が整った。
「将来はホビーショップやイベントなどと連携したリアル販売も行いたい」と口をそろえる夫妻。3年後の黒字化を目指し、模型産業が集積する「ホビーの世界首都」で歩み始めた。
■ゲームやアニメ 企業誘致推進 静岡市産業基盤強化本部
地域経済活性化に向け2024年度に新設された静岡市産業基盤強化本部では、進出企業への助成拡充や不動産会社など民間企業との連携を深め、企業誘致を推進してきた。特にゲームやアニメなどデジタルエンターテインメント関連産業は、若者にとって魅力ある就業先確保につながるとして、30年度までに10社の誘致を目指している。
エグザイルファクトリーは海外企業として初の誘致事例。同本部担当者は「ホビーのまちとしてのブランドが誘致につながった。静岡から世界へ羽ばたく企業に成長してほしい」と期待を寄せる。