日本サッカー協会の宮本恒靖専務理事にインタビュー!部活の地域移行やJリーグ秋春制移行どう考えますか?王国静岡の復活は?

日本サッカー協会(JFA)の宮本恒靖専務理事が静岡市駿河区の静岡新聞放送会館でインタビューに応じた。裾野拡大を目指した取り組みやJリーグの秋春制移行などについて持論を語り、静岡サッカー界への期待を寄せた。

「初めての遠征が清水フェスティバルだった」

ー日本サッカー協会は3月に「中期計画2023−2026」を公表した。目玉施策として取り組んでいることは?
「今後もサッカー人口を増やしていく取り組みは継続していく。『重点3領域』として示したキッズ、女子、シニアへのアプローチは非常に大事になる。その取り組みが10年後、20年後のエリート選手の活躍や代表チームの活性化に繋がる」

ー今の子どもたちは習い事ばかりで忙しい。サッカーを一番に選んでもらうために、何が必要と考えるか。
「個人的な考えだが、サッカーだけを選んでもらう必要はないと思っている。子どもにはいろいろな可能性がある。ある日はサッカーをやり、ある日は野球をやる。もう競争や取り合いをする時代ではない。ただ、そんな中でサッカーが魅力的な選択肢の一つになるには、厳しい言葉を投げるだけではなく、しっかり寄り添った指導もできる指導者が重要になる。しっかりした施設も必要になる。トータルで考えていきたい」

ー日本代表に選ばれる静岡県勢が少なくなった。宮本さんの目に、静岡サッカー界はどう映っているか。
「静岡の育成手法がロールモデルとなり、全国がそれを真似していたという過去がある。自分がサッカーを始めて、初めて遠征したのが清水のフェスティバル。中学2年生ぐらいだった。当時は清水商業高(現清水桜が丘高)が全盛期で、『王国に来たな』という感慨深いものがあった。戦ってみて本当に強かった。

東京都内で行われた各地域の選抜チームの大会では、静岡の選手たちから『サッカー界の中心にいるのは我々だぞ』という雰囲気が漂っていたのを思い出す。今の日本代表は関東の選手がどんどん増えているが、静岡にはしっかりとした土壌がある。藤枝も沼津も試合で行ったことがあるが、地域に根ざしたサッカー文化のある町だなと感じた。静岡はやはりサッカーの歴史がある場所だと思う。たくさんの選手が代表に出てきてほしい」

ー静岡がもう一度復活するために、外からみて必要なことは?
「まずはジュビロに続き、エスパルスもJ1にいることが大切では。両チームがJ1にいるのは、我々の感覚では“普通”のこと。エスパルスのスタジアム問題にも注目している。サッカー専用スタジアムが街中にあれば相乗効果が生まれ、普及や育成の部分にもつながっていくのでは」

欧州で活躍する指導者を育てる

ー中期計画にある「指導者の海外経験促進」とは?
「今はアジアのアンダーカテゴリーには日本の指導者が入っているが、今後はヨーロッパのトップチームで仕事ができるような指導者の養成をしていかなければいけない。

ライセンスの互換性などの問題も出てきて難しい問題だが、例えば長谷部誠選手(藤枝東高出身)のようなヨーロッパで活躍している人材が引退した後、現地で指導者となり、向こうのライセンスを取って功績を残していくという道が考えられる。

今、プレーヤーとしては海外で活躍する日本人が多くなってきたが、トップクラブで活躍する指導者はまだいない。指導者のレベルアップはやっていくべきだろう」

秋春制移行でサッカーが変わる?


ーJリーグの秋春制移行の議論。どうあるべきと考えるか。
「夏場の試合を減らせば、相手からボールを奪った瞬間に前線にボールをつけて、どんどん人が追い越すようなサッカーに変わっていくと思う。やはり夏のサッカーはどうしてもしんどくなり、横パスが多くなる。見に来てくれる人にとって魅力的なサッカーとは、ちゃんと攻守が入れ替わる、インテンシティの高いサッカー。選手にとってもいいことだと思う。

自分の監督時代を振り返っても、7〜8月はどうしてもコンディション調整にならざるを得なかった。若い選手は居残りで練習したとしても、なかなか厳しい。もしかしてこの20年30年は、そういう練習の機会すら奪っていたのかもしれない。時期を変えることによって、競技レベルの向上につながっていくと思う。

ただ、観客を呼ぶことができている6〜7月に試合を行えないなど、ビジネス面での難しさや弊害はある。それでも魅力的なサッカーをすることによって、例えば放映権料のアップにつながったり、違う形でお金が回るようになったりすることも考えられる。今はメリットとデメリットの両方を考えながら議論している段階。

関係者の皆さんは冬場の練習設備の問題なども気にしているので、しっかりとサポートしていかなければいけない。Jリーグクラブはキャンプの回数が増えることになるので、費用面についてもしっかり考えていく必要がある」

ーキャンプ地も変わってくる可能性がある?
「キャンプ地は増えるのではというイメージを持っている。今は多くのクラブは1月に沖縄や九州でキャンプを実施している。秋春制になっても、ウインターブレイク明けの同時期にキャンプを実施することになるだろう。オフ明けの7月ぐらいには冷涼地でキャンプを行うことになる。北海道など涼しい地域に4〜5チームが集まり、地域の子どもたちに試合を見てもらったりすることで、審判の育成など副次的な効果も生まれるのでは」

部活の地域移行「プレーの機会を奪ってはいけない」

ー部活動の地域移行が進めば、サッカーをやりたい子どもの受け皿が少なくなる懸念も。クラブのセレクションに落ちた選手はどうすればいいか。
「サッカーをやりたくても近くにクラブがない地域もあれば、練習場までの移動手段に悩んでいる地域もある。地域によって課題は全然違う。細やかに、柔軟に対応できるようにしていきたい。大切なのはプレーの機会を奪ってはいけないということ。本当にクラブのセレクションは必要なのかどうかなど、協会として対話はできるのかなと思う」

ー森保ジャパンが好調を維持している。
「日本代表が強くあり続けることは大切だ。例えば『スペインのクラブチームのコーチに学ぶ』というビジネスに需要があるのはなぜか。ラ・リーガ(スペイン)のプレゼンスが大きいから。そのプレゼンスを日本代表チームがつくっていけたら、普及にもおのずと繋がっていく。

A代表が強いということは、競技力の向上だけでなく、AFC(アジアサッカー連盟)やFIFA(国際サッカー連盟)での発言力にもつながっていく。なでしこジャパンがW杯で優勝した時は、『日本に学べ』という空気が生まれた。中長期の視点で選手育成などを計画していく必要がある」

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