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静岡人インタビュー「この人」 第60回現代俳句全国大会賞を受賞した 伊藤孝一さん(清水町)

 現代俳句協会が主催する全国大会で、応募1万2515句の中から最高賞に選ばれた。受賞句「暗がりを遠き夜汽車のやうに蛇」は、ことしの初夏、自宅の庭に迷い込んだ蛇を、夜汽車に重ねて詠んだ。俳句はJR東海を定年退職したの機に趣味として始めた。73歳。

伊藤孝一さん
伊藤孝一さん

 ―受賞の喜びを。
 「3度目の挑戦だった。俳句歴は浅く協会員でもないため、いただけるなんてと驚いた。長年、夜間に電気設備の検査や修理に携わることが多かった。夜汽車を見送るときもあり、蛇が遠ざかっていく姿が重なった」
 ―大会を振り返って。
 「選者による入賞句のディスカッションで、私の句の〈遠き〉という言葉について、『効いている』という評価があれば『曖昧だ』という意見もあった。〈夜汽車〉は音として捉えるか、幻想として捉えるか、などさまざまな評をいただいた。私の句を巡って解釈が思わぬ方向へ展開していく様子を目の当たりにし、自分の手を離れると読者のものになると実体験した」
 ―俳句の楽しさとは。
 「日々、俳句が浮かぶとスマートフォンに記録している。上句と下句を入れ替えたり、主人公を自分から対象物に変えたりする。句会や結社には参加しておらず、教えを請うのは専らNHKの通信講座。自分の句が思い込みに終わっていないか、類句はないか、評価や添削を受けると一人では気づかない発想も得られる」
 ―今後の目標は。
 「老後の楽しみと始めた俳句だが、受賞を機にその奥深さを知り、まだまだ精進が足りないと痛感した。世の中の移り変わり、全てが季語になる。さらに深みにはまりそう。いつか句集を出してみたい」
 (教育文化部・岡本妙)

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