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「つながりが重要」痛感 断水克服、仲間が救いに【障害者と生きる 第4章 災害㊥】

 台風15号の影響で大規模な断水被害に見舞われた静岡市清水区。先天性筋強直性ジストロフィーの息子渡辺隼[しゅん]さん(25)を1人で介護する父裕之さん(59)=同区=の自宅は浸水被害を免れ、深刻な状況には至らなかったが、「備えが足らなかったと反省した。同じ境遇に立つ人たちに経験を伝えたい」と被災した数日間を振り返った。

台風15号による断水被害を受けて、給水所で水を受け取る渡辺裕之さん(右)=本人提供
台風15号による断水被害を受けて、給水所で水を受け取る渡辺裕之さん(右)=本人提供

 断水が始まったのは土曜日と重なった9月24日午後。休日は通所施設が開いていないため、一日中在宅で隼さんを介護する必要がある。医療的ケアがあり1人にはできないため、夕方にヘルパーが来るまでは買い出しに行けない。
 店に向かえた頃には、すでに水やウエットティッシュなどはどこも売り切れ。近隣の中学校で水の配給があると耳にしたが、ヘルパーが帰る時間が迫っており、大行列に並ぶ余裕はなかった。
 たん吸引や食事をふやかす際にも水は不可欠。「2リットルの水を9本備えていたが甘かった」。週明けの平日から通常通り通所施設が開いてくれたことと、断水初日は認知症の母美奈江さん(90)が短期入所を利用できていたことが幸いだった。
 免疫力の弱い隼さんは湯船に浸かれないと体調を崩してしまうという問題もあった。気は配ったが、断水2日目の夜、発熱した。「JR静岡駅周辺のビジネスホテルに空きを聞いてみたが、どこも満室。無料開放してくれた温泉施設などもあったようだが、隼を連れては行くことはできないので…」
 困り果てていたが、隼さんが通っていた特別支援学校の同級生の親仲間や障害者団体の仲間に支えられた。断水4日目。駿河区で障害者向け施設を運営するかつての親仲間から「施設のお風呂を開放しているので来ませんか」と電話があった。飲料水を届けに来てくれた訪問看護師や障害者団体のメンバーもいた。
 「本当にありがたい。障害者の介護者にとって、同じ立場同士のコミュニティーや人のつながりがいかに重要かを改めて痛感した。今度は自分が助ける側に回らないと」
   ◇
 裕之さんは妻美保さん(仮名)を亡くしてからの4年間を思い返し「福祉にはまだ課題があるが、県でも7月に医療的ケア児等支援センターが開所するなど、支援の見直しや世間からの関心の変化という面で少しずつ前には進んできたはず」と振り返る。その上で、「今後も経験の発信や障害者コミュニティーの発展など福祉の改善に協力していきたい」と声に力を込めた。

 

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