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支援の仕組み確立が課題 “助け”積極要請も重要 静岡市障害者協会/牧野善浴会長に聞く【障害者と生きる 第4章 災害㊦】

 静岡市障害者相談推進センターの管理者で市障害者協会の牧野善浴会長は、障害福祉の課題解決へ向けた行政との協議会などに出席する一人。渡辺隼[しゅん]さん(25)を1人で介護する父裕之さん(59)ら福祉サービス利用者の相談にも応じてきた。台風15号の影響で発生した大規模な断水被害から見えた災害時の要配慮者支援対策の課題をはじめ、現在の福祉サービスの実情を聞いた。

静岡市障害者協会の牧野善浴会長。災害時の要配慮者対策の課題を語る=12月上旬、静岡市葵区
静岡市障害者協会の牧野善浴会長。災害時の要配慮者対策の課題を語る=12月上旬、静岡市葵区

 -台風15号による災害を経て、要配慮者支援対策をどのように分析しているか。
 「10月7日の市災害対策本部会では、調査により『地域や支援サービスとつながりがあり、医療的支援を要する世帯はなかった』と報告されているが、疑問が残る。今回は、医療関係者ら支援者の自発的な共助で支援を求めた人にはケア用品などを届けることができたが、医療的ケアを含む要配慮者への支援は仕組みとしてはできていない」
 -改善の方策は。
 「10月の行政による調査は被害が深刻な地域かつ避難行動要支援者名簿の家庭に絞ったため限定的で、不在世帯も多かった。11月からは、被災地域全住民を対象に行政職員による調査が始まった。民生委員や自主防、相談機関などにも協力を要請すれば効率化を図れる。災害時に迅速にニーズを把握するために、ためらわずに助けを求めるよう当事者に積極的に呼びかけることも重要」
 -2月に渡辺裕之さんが新型コロナウイルスに感染した際、相談に瞬時に対応した。重症心身障害者やその介護者がコロナに感染した場合の対応を巡って準備があったのか。
 「約2年前から、医師や有識者、行政の関係者らが集った協議会で、医療的ケア児者やその介護者がコロナに感染した場合の対応について一定の方針を確認していた。裕之さんの場合はダブルケアというギリギリの状況を医療機関が考慮し、日ごろから支援していた相談機関や通所施設、訪問看護、ヘルパーなどの事業所も柔軟に協力した」
 -在宅でのダブルケアの介護者を現在の福祉サービスで支えることに限界はあるのか。
 「裕之さんは使える制度を全て利用してサポートを受けている。しかし、現在の支援体制は単身でのダブルケアを想定しきれておらず、限界がある」
 -今後、障害福祉サービスにはどのような変化が必要と考えるか。
 「医療的ケアができるヘルパーは限られていて、人数は少ない。研修を実施しようとする事業所も少なく、改善への進みは遅い。今後も、障害者の介護を取り巻く課題は出続けるだろう。用意された支援や制度から漏れてしまった人に対しても、状況を判断しながら柔軟に対応していく必要がある」

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