水資源不安、消えぬ流域 リニア問題「科学的解決を」【参院選しずおか】

 リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う大井川水問題は、参院選公示を前後して国、県がそれぞれ動きを見せた。国土交通省は南アルプスの生態系を議論する専門家会議初会合を開き、県は沿線自治体でつくる建設促進期成同盟会に加入することが決まった。ただ、大井川流域からは「不安が残る状況は何も変わっていない」との声が聞こえる。住民は事態をどう見つめ、国や国会議員にどのような役割を求めているのか。選挙期間中、流域に暮らす人たちを訪ねた。=関連記事4、28面へ

大井川用水を引いた田んぼで稲を育てる池ケ谷明生さん。大井川の水が地域の農業を支えている=6月下旬、島田市
大井川用水を引いた田んぼで稲を育てる池ケ谷明生さん。大井川の水が地域の農業を支えている=6月下旬、島田市

 「本当に水は減らないのか。根拠に基づいた説明を聞きたい」。6月下旬、島田市の農業池ケ谷明生さん(73)は青々と稲が丈を伸ばす水田で手入れをしながら話した。米と茶を栽培し、冬場は水田でレタスを育てる。育苗は大井川の地下水を使い、水田は大井川用水から水を引く。水問題は生活と直結する。
 国交省の専門家会議は水資源を巡る問題を先行して議論し、昨年12月に中間報告を公表した。「トンネル湧水の全量戻し」を実現すれば水資源への影響をほぼ排除できるとしながら具体的な手法は提示せず、池ケ谷さんは失望した。「安定した水の供給は農業の根幹。JR東海と国は分かっているのか」。納得できる説明を聞くまでリニア工事に賛同する気になれない。
 同社は、4月に再開した県の専門部会で「全量戻し」の代替案として東京電力田代ダムの取水抑制案を提案した。大井川土地改良区理事長の内田幸男さん(87)は6月中旬、流域のほかの利水団体とともに同社から案の説明を受けたが、「とても納得のできる内容ではなかった」。加えて「1年8カ月も議論して最終的な案がこれなのか」と落胆し、「JRはもっと知恵を絞り、国は指導力の発揮を」と求める。
 一方、生態系について議論する同省の会議は、結論を出す期限を設けず、腰を据えて取り組む姿勢を打ち出す。ただ、川勝平太知事はリニア建設促進期成同盟会に加入するために「現行ルートでの整備が前提」との立場を明言した。森林組合おおいがわ組合長の杉山嘉英さん(67)は「着工ありきの議論になるのか。流域住民が求めるのは科学的な解決だ」と、政治決着を目指すような動きが前面に出ることにくぎを刺す。
 大井川の地下水を使い、世界が評する日本酒を醸す初亀醸造(藤枝市)社長の橋本謹嗣さん(69)は「願いは一つ。孫の代まできれいな水をつなげたい」。政治家には市民との対話を大切にし、思いをくみ取る姿勢を求める。

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