リニア水問題 全量戻し、解決の道は?【「グラレコ」で可視化!静岡県知事選争点㊥】


 川勝平太知事はJR東海が2027年のリニア中央新幹線開業を断念し、「大きな区切りを迎えた」として辞職表明した。だが大井川の水や南アルプスの環境の問題はまだ解決に至っていない。なぜリニアが必要と言われ、どんなことが懸念されるのか、手書きの文字や絵で議論の全体像を可視化する「グラフィックレコーディング」で紹介する。
 会議やイベントで話された内容を記録する「グラフィックレコーダー」として働く静岡市清水区の増田彩香さんに、静岡新聞記者がリニア問題の概要を説明し、制作を依頼した。
 リニアは超電導の磁力で車両を浮かせ、最高時速500キロで走行。東京(品川)から名古屋まで最速40分、大阪まで67分で行ける。開通後は東海道新幹線の県内駅への停車本数が増えると国は試算。南海トラフ地震で同新幹線が運行不能になった時の大動脈確保も目的の一つだ。
 一方、南アルプストンネルの建設によって湧き出た大井川水系の水が、トンネル両端から山梨、長野両県に流出する可能性がある。同トンネルは大井川の下を通るが、地下に水が通りやすい断層があり、トンネル内に大量の水が湧く恐れがある。
 川勝知事は大井川の水量が減らないよう「トンネル湧水の全量戻し」を主張し、静岡工区の着工を認めなかった。大井川では県が国から河川法の一部権限を委託されていることや、14年の事業認可時に当時の国土交通相が「地域の理解と協力を得ること」を条件としたこともあり、着工を拒む形となっている。
 全量戻しの方策として、JRは22年4月、大井川上流の田代ダム(静岡市葵区)の取水を流出量と同じ量抑制することを提案。県と流域市町もJRの実施案を認めるなど徐々に協議が進み始めている。ただ、トンネル掘削で発生する大量の土の置き場や安全性など未解決の問題もあり、次の知事がどのように解決を図るのか手腕が問われる。
 制作者の増田さんは、次期知事に「大井川の水問題などで想定されるリスクについて、客観的なデータを県民に示しながら議論を進めてほしい」と求めた。

 グラレコ制作者 増田彩香さん 独学でグラレコを練習し2018年から仕事に。三保松原の保全に取り組む一般社団法人三保松原3ringsプロジェクト理事。

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