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知的障害者向け芸能事務所 相次ぎ登場、映画やモデル 機会拡大も残る意識の壁

 知的障害があっても芸能人になりたい―。そんな夢をかなえようと、知的障害者向けの芸能事務所が近年、相次いで登場している。ダイバーシティー(多様性)を重んじる社会の流れを受け、映画や舞台への出演、モデル活動など機会は徐々に広がってきた。ただ「どう接したらいいのか」「『障害者で金もうけしている』と批判されそう」といった反応もあり、業界や見る側の意識が壁として残っている。

所属タレントと話す障害者専門の芸能事務所「アヴニール」の田中康路社長(左)=4月、東京都新宿区
所属タレントと話す障害者専門の芸能事務所「アヴニール」の田中康路社長(左)=4月、東京都新宿区
障害者専門の芸能事務所「アヴニール」の田中康路社長=2月、東京都中野区
障害者専門の芸能事務所「アヴニール」の田中康路社長=2月、東京都中野区
出演した映画の上映会で舞台あいさつする町田萌香さん=2月、東京都中野区
出演した映画の上映会で舞台あいさつする町田萌香さん=2月、東京都中野区
「グローバル・モデル・ソサイエティー」の高木真理子社長(左から2人目)と、町田萌香さん(左端)ら所属モデル=4月、東京都中央区
「グローバル・モデル・ソサイエティー」の高木真理子社長(左から2人目)と、町田萌香さん(左端)ら所属モデル=4月、東京都中央区
モデルや俳優として活動する町田萌香さん(グローバル・モデル・ソサイエティー提供)
モデルや俳優として活動する町田萌香さん(グローバル・モデル・ソサイエティー提供)
「エレメンツ」に所属し、舞台出演に向け稽古するダウン症がある男性(左)=2023年10月(引地信彦氏撮影、パルコ提供)
「エレメンツ」に所属し、舞台出演に向け稽古するダウン症がある男性(左)=2023年10月(引地信彦氏撮影、パルコ提供)
所属タレントと話す障害者専門の芸能事務所「アヴニール」の田中康路社長(左)=4月、東京都新宿区
障害者専門の芸能事務所「アヴニール」の田中康路社長=2月、東京都中野区
出演した映画の上映会で舞台あいさつする町田萌香さん=2月、東京都中野区
「グローバル・モデル・ソサイエティー」の高木真理子社長(左から2人目)と、町田萌香さん(左端)ら所属モデル=4月、東京都中央区
モデルや俳優として活動する町田萌香さん(グローバル・モデル・ソサイエティー提供)
「エレメンツ」に所属し、舞台出演に向け稽古するダウン症がある男性(左)=2023年10月(引地信彦氏撮影、パルコ提供)

 「すてきな共演者の方々と一緒にこの作品に出ることができ、とてもうれしかったです」。今年2月、東京都内のホールで開かれた映画の上映会。町田萌香さん(36)はプロの俳優らと舞台に立ち、そうあいさつした。
 町田さんは軽い知的障害があるが、181センチの長身を生かして、普段の仕事の傍らモデルや俳優として活動している。
 町田さんが所属するのが障害者向けの事務所「グローバル・モデル・ソサイエティー」(東京)。元モデルの高木真理子さん(62)が「障害があっても、世界で勝負できるモデルを育てたい」と2022年に設立した。
 知的や身体に障害がある約20人が所属。高木さんは「いろいろな可能性があるということを障害児の親や世の中の人に知ってほしい」と話す。
 「彼らは『どう見られるか』を意識せずに演技できる。初めて見たとき、心を揺さぶられた」
 そう話すのは「アヴニール」(東京)の社長、田中康路さん(50)だ。障害者のドラマ出演などに関わってきた経験を生かして17年に同社を設立。現在は知的障害を中心に約50人の障害者が所属しており、舞台の自主公演や芸能スクールの運営などに取り組む。
 一般の芸能事務所が手がける例も。「エレメンツ」(東京)は10年ほど前から社内のプロジェクトとして、ダウン症がある人の舞台出演やダンス活動を支援している。
 「東京パラリンピックなどが追い風となり、テレビへの出演機会などがここ数年増えてきた」と担当者。「彼らが成長する姿を見て、共演する役者たちが刺激を受ける相乗効果がある」と話す。
 どの事務所も「福祉や慈善でやっているのではない」と、所属タレントの起用には出演料を求める。ただ、事業の採算という点ではいずれも苦労しており、芸能活動だけで生計を立てている人はいない。
 身体障害者と違って、知的障害者はせりふの記憶や意思疎通の面で配慮が必要になるほか、制作サイドや企業が視聴者の反応を気にして起用に二の足を踏むことも多いという。各事務所は所属タレントのCM出演などを模索しているが、活躍の場が広がるかどうかは社会の意識変化にかかっているといえそうだ。

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