(文と写真=論説委員・橋爪充)

山口源は1896年に富士市で生まれ、太平洋戦争中から戦後にかけて現在の沼津市江浦で創作を続けた世界的版画家だ。2026年は彼の没後50年という節目の年である。遺族から寄贈された作品や関係資料約3500点を所蔵する沼津市庄司美術館(モンミュゼ沼津)は、7月15日の命日に合わせ、7月11日から節目の年を記念した回顧展を予定している。
同じモンミュゼ沼津で6月末まで開催中の第92回日本版画協会沼津巡回展では、山口源の名前を冠した「山口源賞」の受賞者の作品が多数出品されている。
山口源賞は、1983年に沼津市が創設した。沼津信用金庫が創立30周年を記念して寄付した1000万円に沼津市が1000万円を上積みした沼津市芸術文化振興基金が原資。その利息を経費や賞金に充てる形だった。
2年に1度大賞を選び、日本版画協会の協会展の出品作から将来性を認められるものを新人賞とした。大賞は2015年の第17回を最後に選ばなくなったが、新人賞は今も続いていて、全国の若手版画家の登竜門とされている。
2015~2019年の沼津市赴任時代、この山口源賞の大賞選出者の顔ぶれに驚いた記憶がある。「第92回日本版画協会沼津巡回展」でも、テレビモニターで歴代の大賞受賞者の作品を紹介している。

超大物の名前が並ぶ。例えば第 9回(1999年)は李禹煥さん『照応98-3』(リトグラフ、銅版画)。第10回(2001年)は柳澤紀子さん『水邊の庭 Ⅴ』(銅版画、手彩色)。第15回(2011年)は靉嘔さん『Rainbow men&woman B-peace sign to Yoko&john-’09』(シルクスクリーン)。版画という表現の枠を飛び越えた現代アーティストたちだ。
新人賞受賞者も各地で活躍している印象である。特に2008年の第26回新人賞の遠藤美香さんには注目している。2022年4~6月に浜松市美術館で開かれた個展では、超大型の一色刷りの数々に圧倒された。早く次の個展が見たい。
今回の巡回展の出品作の中では、第11回(2003年)の大賞受賞者である磯見輝夫さん『汀線Ⅳ-潮時』(木版、60×95.5)に惹かれた。墨一色で描いた夜の海面と思いきや、目を凝らすとゆらゆらと動く海藻や魚の横顔が浮かび上がる。ちょっと目を離すと、そのイメージは消えうせる。海の表面と海中を同時に平面化したような印象を得た。
第22回(2004年)の新人賞受賞者、小越朋子さん『記憶と雨2』(エッチング、アクアチント、40×40)にはきらめきを感じた。具象ではないが、明らかに天と地、上と下を感じさせる。全体的にすみれ色で覆われていて、縦に何本も不規則な「筋」のようなものが走っている。不連続なグラデーションがとても美しい。視覚的に認知できない「何か」が天上から降ってくるような気分をかき立てられた。
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■沼津市庄司美術館(モンミュゼ沼津)「第92回日本版画協会展 沼津巡回展」
住所:沼津市本字下一丁田900-1
開館時間:午前10時~午後5時
入館料:大人200円、小中学生100円 ※市内の小中学生無料
休館:5月25日、6月1、8、15、22、29日
会期:6月30日(火)まで










































































