(文・写真/経営戦略室・天野大輔)

「我々にとっても、業界にとってもそうだと思うんですけども、やっぱり田宮俊作会長の存在は大きくてですね。それこそ、ある意味この業界を“文化”に消化したところもあると思いますし、世界中にファンもいてくださいますし、本当に非常に偉大な存在だったなと、それは、改めて思うところです」
2026年5月13日、模型の首都・静岡で幕を開けた「第64回静岡ホビーショー」。その記者会見の場で、昨年7月に90歳で逝去したタミヤ・田宮俊作会長への思いを語ったのは、跡を継いだ田宮信央代表取締役社長だ。信央社長は、俊作会長の孫娘の夫として2020年9月にタミヤ入社。2024年に社長職を退いた俊作氏のバトンを受け継ぎ、社長に就任した。
これまで、同ホビーショーを主催する静岡模型教材協同組合の理事長として、長年記者会見の「顔」を務めてきたのは俊作会長だった。2024年7月の社長就任から2年弱、信央社長にとって同会見への出席は今回が初めてとなる。先代が情熱を注ぎ続けたこの場所で、新社長が語ったのは、タミヤが守り続けるべき「精神」と、新時代を見据えた決意だった。
俊作会長から引き継いだ「模型屋」としての誇り
会見に臨む田宮信央代表取締役社長(テーブル左端)
<タミヤ 田宮信央代表取締役社長>
タミヤとしては、変わらずに淡々とやろうと、そういうことを社員一丸となって、取り組んでいるところで。私も「タミヤニュース」っていう、 50年以上毎月発行しているんですが、時折表紙の裏に寄稿するんですね。文章を書きます。今回も書いたんですが、昨年も書かせていただいて、もう変わらないんですけども、「我々やっぱり模型屋だ」と。私も「模型屋」というものにすごく誇りがあるんですね。
記者会見は、例年、「静岡ホビーショー」の初日にツインメッセ北館の奥にある応接室で、組合員である青島文化教材社、タミヤ、ハセガワの3社と静岡に工場を持つBANDAI SPIRITSが参加して行わる。その後、組合の理事長を務めていた田宮俊作会長が会見後の囲み取材に応じるのが恒例だったが、俊作会長が逝去し、信央社長が就任してから初めて迎える今回のホビーショーでは、信央社長が初めて会見の場に臨んだ。
記者から、俊作会長亡き後初となる今回のホビーショーへの思いを問われた信央社長は、社長就任時からメディアの取材などで語ってきた「模型屋であることの誇り」を改めて口にした。この“模型屋”という言葉は俊作会長が生前好んで使っていたものであり、俊作会長の経営哲学と心意気を象徴するものといえる。
「どんなところにも現物を見に行く」骨格標本に込められた精神
タミヤブースで目を引くフクイラプトルの骨格標本
<タミヤ 田宮信央代表取締役社長>
やっぱり実物があって、そこにすごくリスペクトがあって。だからわれわれはそこに全部現物を、どんなところにも見に行って、今回の恐竜も見に行って。そこに我々の解釈を乗せてですね、模型として分割して再現して、そこに新しくお客様の表現を重ねてもらう。そういったことをずっと会長も大事にしてきましたし、我々もこれからも大事にしていこうということで。変えてはならないところ。そこはしっかり受け継いで、スピリットとしてやっていこうと。
「実物を見る」という行為は、俊作会長が“模型屋”として常に心がけてきたことであり、タミヤの象徴とも言える姿勢だ。国内外を問わず自ら足を運び、実物を徹底的に確認した上で生み出される緻密なスケールモデルは、タミヤを世界的なメーカーへと押し上げる原動力となった。かつてリアルさを追求するあまり、高価なポルシェを実際に購入して解体・研究したという逸話は、その執念を物語る有名なエピソードである。
今回のホビーショーで発表された新たなプラモデルシリーズ「クリックロック 1/35 恐竜シリーズ」にも、この「本物を見ることの大切さ」が色濃く反映されている。その精神を体現するかのように、会場には同シリーズの第1弾となるフクイラプトルの骨格標本が展示され、来場者の注目を集めていた。
「変えるべきところは、努力・試行錯誤してやっていく」
会場内で最大の面積を占めるタミヤのブース
その一方で、信央社長は「時代は急速に変化してますんで、そういった意味で変えるべきところ、例えば裾野を広げるとか、そういったところに関しては新しく努力、試行錯誤してやっていこうと。そういった思いで、今取り組んでるところです」と、伝統を守るだけではなく、未来を見据えた変革の必要性についても、言葉を添えた。
俊作会長から受け継いだ不変のスピリットを核に据えながらも、時代の変化に即して自らをアップデートさせていく。タミヤが踏み出した新たな一歩は、これまでのファンを大切にしながら、より広い世代へと「つくる喜び」を繋いでいくための、攻めの姿勢の現れと言えるだろう。








































































