​【野外音楽フェスティバル「FUJI & SUN ’26」プレビュー】富士山頂を仰ぐフェス、6月6日開幕。今年出演の柴田聡子、くるり、cero、鎮座DOPENESSらの過去のステージを振り返る

静岡県のアートやカルチャーに関するコラム。今回は6月6、7日の両日に富士市の富士山こどもの国で開催する野外音楽フェスティバル「FUJI & SUN ’26」を題材に。2019年の初開催から全て参加してきた筆者が、今年の出演者の過去の名場面をたどる。
(文と一部写真=論説委員・橋爪充)

(C)FUJI&SUN’26


FUJI & SUNのアーティストラインナップの絶妙さをなんと表現したらいいのだろう。「オーバーグラウンドとアンダーグラウンドの絶妙な交錯」「ジャンルレス」とは主催者の弁。それはそうなのだが、それだけではないような気もする。個人的には「耳を傾けるに値する人たちがそろっている」という印象だ。質のいいセレクトショップ。品揃えに間違いがないレコード店。どんな素材でも巧みに調理する料理人のいるレストラン。そんな店に近いフェスなのだ、FUJI & SUNは。

今年のラインナップを見ると、このフェスの「おなじみさん」がそろっている。だからといってがっかりするわけではない。「FUJI & SUN印」のアーティストは、判で押したような演奏は決してしない。それは、これまで6回のフェスをつぶさに見てきた筆者が保証する。今回も、2026年6月の富士山麓でしか聴けない演奏が繰り広げられることだろう。

(C)FUJI&SUN’26


以下に、今年出演のアーティストたちが過去のFUJI & SUNに出演した際の個人的な感想を述べるが、逆に言えば、今年は同じステージ内容にはならない。だから信用に値するのだ。このフェスは。そして出演するアーティストは。

タイムテーブルの出演順にたどっていく。6日午後1時からの柴田聡子。2024年の初登場はすり鉢状のSTONE CIRCLE STAGEだった。同年の傑作アルバム『Your Favorite Things』収録曲を次々演奏した。発表直後だったせいか、どの曲も実に楽しそうに演奏していた感がある。2025年は最大のSUN STAGEに登場。椅子に座る形でアコースティック・ギター弾き語りだった。「Your Favorite Things」収録曲が前年とは全く違って聞こえた。指からはじき出されるグルーヴ感が増していた。静岡が歌詞に出てくる「雑感」も披露した。

2024年の柴田聡子のステージ(同年5月22日付静岡新聞から)


6日午後2時10分からの田島貴男(Original Love)は2019年の第1回FUJI & SUNを知るアーティストの一人。今とはステージ位置が違うMOON STAGEの、偶然にも今回と同じ午後2時10分からの演奏だった。日差しが強くかなり暑かったが、演奏も熱かった。2010年代から始めた「ひとりソウルショウ」が、ほぼ完成の域に達していて、「こんなに黒っぽい演奏をする人だったんだ」と驚いた記憶がある。その後、大トリの「林立夫 special session with 矢野顕子 & Guests」名目のステージで、大瀧詠一の楽曲も歌った。

(C)FUJI&SUN’26


6日午後5時半からのくるり。FUJI & SUNには2021年と2024、2025年に出ている。今回は3年連続の出演となる。記憶が鮮明なのは2024年だ。伊東市の「伊豆スタジオ」で録音したアルバム『感覚は道標』を発表した直後だった。セットリストを彩る代表曲群の中でも、同アルバムのリードトラック『California coconuts』など、収録曲の数々は特別に聞こえた。彼らは今年、同じように伊豆スタジオで録音した『儚くも美しき12の変奏』を出した。シンプルな編成だった『感覚は道標』よりはるかに複雑なアレンジの楽曲を富士山麓でどう演奏するのか、注目している。名曲『Regulus』が聴きたい。

2025年出演時のくるり


新進気鋭という言葉が似合わなくなり、大御所としての風格さえ出てきたドラマー石若駿もこのフェスに縁の深い人物だ。なんだかんだで毎年、出ている気がする。本人の名前がクレジットされていなくても、例えば2023年の君島大空など、「あっ、石若さんだ」と当日になって出演に気付く場合もあるから侮れない。個人的に思い出深いのは2024年、ブラジル出身のギタリスト、ファビアーノ・ド・ナシメントとのデュオだ。7弦ギターのナシメントと、目を合わせながら複雑なリズムとキメを次々繰り出す石若には度肝を抜かれた。今年は6日の午後7時40分から「JAZZ NOT ONLY JAZZ in FJSN(石若駿 × 渡辺翔太 × マーティ・ホロベック)feat. 大橋トリオ & 田島貴男」という名義で出演する。

2024年のステージ。石若駿(左)とファビアーノ・ド・ナシメント(同年5月22日付静岡新聞から)


7日の早い時間のSUN STAGEは、くしくも2023年の初日夜の並びと同じだ。午前10時から優河、午後0時半から君島大空。この二組の間に、11時10分からSUN STAGEではCHO CO PA CO CHO CO QUIN QUINの演奏がある。両ステージを走って往復する必要がある。2023年の暗闇にスーッと溶けていくような優河の歌声、漆黒をかき混ぜてカラフルな色を取り出すかのような君島の超絶技巧のギタープレーはいまだに覚えている。この年のハイライトだったと言ってもいい。2026年、明るい時間帯にこの両者は何を見せてくれるのか。

(C)FUJI&SUN’26

(C)FUJI&SUN’26


7日午後3時半からはceroがこのフェス4回目の登場。個人的に心に残るのは2023年である。初日のSUN STAGEのトリを8人編成で飾った。雨が続いた厳しいコンディションのこの日は、そういう時にありがちだが各アーティストが集中力の高い演奏を見せていた。ceroはそんな中でもさらに一歩進んだ、精巧さの中にやわらかさを感じるアンサンブルを聴かせてくれた。複雑なリズムや多重コーラス、きらびやかなシンセサイザー。アンコールの『Summer Soul』が今も耳に残る。

2023年のceroのステージ(同年5月23日付静岡新聞から。Photo by Makoto Ebi)


7日午後5時からの鎮座DOPENESSは、3年連続の出演。2024年のSTONE STAGEでは、これから演奏だというのにぎっしり埋まった客席エリアをあちこち歩き回りながら平然とサウンドチェックする姿が衝撃的だった。2025年はソロアクトの前にタブラ奏者のU-zhaanの演奏に飛び入り参加。環ROYと3人で作ったアルバム「たのしみ」からの2曲は、この年の個人的なクライマックスだった。脳がしびれた。米国のヒップホップの歴史と、インドのタブラ奏者の系譜を交錯させた「BUNKA」には、客席から長く、大きな拍手が湧いた。

2025年のステージから。鎮座DOPENESS(右)とU-zhaan(C)FUJI&SUN’25


<DATA>
■FUJI & SUN ’26
会場:富士山こどもの国(静岡県富士市桑崎1015)
公演日時:6月6日(土)OPEN9:00~CLOSE21:00
     6月7日(日)OPEN8:30~CLOSE19:00
出演:★6月6日 くるり / ハンバート ハンバート / 田島貴男 (Original Love) / YOUR SONG IS GOOD (CHILL & DUB) / JAZZ NOT ONLY JAZZ in FJSN(石若駿 × 渡辺翔太 × マーティ・ホロベック) feat. 大橋トリオ & 田島貴男 / 奇妙礼太郎 / 柴田聡子(BAND SET) / シャッポ / 北村蕗 / 梅井美咲 / HAL & Baku and more...!
★6月7日 never young beach / ハナレグミ / KIRINJI (弾き語り) / cero / 藤原さくら / 君島大空 / 寺尾紗穂 / 優河 / 鎮座DOPENESS / CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN / 眞名子新

【各種チケット取扱い】
★小学生以下入場無料、U18割・U25割も販売
●ローソンチケット:https://l-tike.com/fujiandsun26/
●イープラス:https://eplus.jp/fjsn26/
●チケットぴあ:https://w.pia.jp/t/fjsn26/
●楽天チケット:https://r10.to/fjsn
●Zaiko:https://wowow.zaiko.io/e/fujiandsun26

★静岡県民対象「しずおか県民割」
静岡県内コンビニエンスストア・ローソンチケットwebにて販売
● ローチケ(Web)https://l-tike.com/st1/ktdce8ncptgvsqggyy3a
● ローソン・ミニストップ:店内のLoppi(Lコード:94001)にて販売
● ファミリーマート:店内のマルチコピー機にて販売

★富士市ふるさと納税 返礼品として入場券の取り扱い
 

静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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