負けていい試合はない
春の勝者は夏に勝てない、そんなジンクスが取りざたされる。だが、昨夏は聖隷が、2015年には静岡が第1シードから夏の頂点に上り詰めた。
初鹿文彦監督は「そんなに春に力を入れたってと言われるけれど、一度きりの高校野球。負けていい試合は一つもない。タイトルをどうしても取りたかった」と晴れやかな表情を浮かべた。
スクイズ封じ
聖隷クリストファーとの準決勝。初回、先頭の高橋舵真(かじま)選手が初球を右中間にはじき返す二塁打で出塁すると、続く屋嘉(やか)敦輝選手の適時三塁打であっという間に先制した。とはいえ相手は全国屈指の左腕、高部陸投手。取れる時に1点でも多く取っておきたい無死三塁の場面だったが、初鹿監督から「スクイズ」のサインは出なかった。
昨夏の後悔
知徳を語る上で欠かせないスクイズという戦術。指揮官は「去年の夏、静岡商に負けた後、スクイズはやめました。何万回もスイングをさせておいて、最後の夏の一打席をスクイズ(得点にならず)で終わらせてしまったので。その子には卒業式で謝りましたよ」と明かした。そして「そもそも高部投手の球をバントするのは難しいんですよ」とも。
打って点を取る
津布久(つぶく)晃佑主将は「バント練習は日頃からやっていて、大事な場面、打てない時はスクイズ行くぞと言われています。ただ、去年秋の終わりごろから試合でバントをすることが少なくなりました。やるのは8、9番ぐらい。打って点が取れるなら打って取る。誰かが打てない時は誰かがカバーします」と話す。
冬の間に週2~3回のウエートに取り組んだり、食事について栄養士の講話を受けたりして、それぞれ体が一回り大きくなり、振る力が付いたことに加え、この春は思い切りの良さが光った。準決勝、決勝で2本の本塁打を放った高橋選手は「(バントせずに)うまくいかないこともあったけど、みんなでカバーし合って、思い切って振れるようになった」と言う。
打てる球を打つ
また、指揮官は「やっちゃいけない」という〝呪縛〟を解いた。「チームで狙い球を決めるのではなく個々で決めさせました。打っちゃいけない球を探すより、打てる球を打っていこうと言いましたね」。狙い球を果敢に打ちにいった高橋投手は「(高部投手という)一番いいピッチャーからいい結果を出せたことが自信になりました」と収穫を得た。
春は積極性、思い切りの良さが結果につながった。夏はまた別の重圧が掛かった戦いになる。初鹿監督は「そのうちスクイズやると思いますけどね」と笑った。
(編集局ニュースセンター・結城啓子)

【取材後記】
津布久主将は「控えメンバーがサポート、応援してくれているおかげ。(ベンチ入り)メンバーもそれに応えないとと思ってやっている」と言います。高橋選手も「メンバー外の協力があって精いっぱい練習できたこと」を勝因に挙げます。
どのチームの選手も口にする言葉ですが、初鹿監督に尋ねると例年、夏までに徐々に団結力が強くなっていくところ、今年はそれが「早い」と感じているそうです。
「片付けや準備などを3年生が手伝うようになり、そういう3年生に勝たせてあげたいという気持ちからか2年生がすごく大人になりました。選手一人一人が自分にできることを探しています。限られたグラウンドで部員64人。打撃投手、捕手等やれることを一生懸命にできるのがうちのチーム。グラウンドに行くのが楽しいですよ」と雰囲気の良さを明かしてくれました。









































































