【高校野球座談会・大会展望】静岡大会優勝争いの中心は?ダークホース的存在は?伝統校は意地を見せそう?

7月8日から始まった第105回全国高校野球静岡大会。静岡新聞運動部の高校野球歴代担当記者が「大会展望」「注目選手」「記憶に残る名場面」という3つのテーマで座談会を行いました。座談会の最初のテーマは「大会展望」です。

加藤学園が夏のジンクスを突き破れるか

春季高校野球東海大会で優勝し、喜ぶ加藤学園ナイン=5月24日、草薙球場


ー座談会の最初のテーマは「大会展望」です。ずばり優勝争いの中心になるのはどのチームでしょうか。

(吉沢)やはり中心になるのは第1シードの加藤学園でしょうか。昨年の秋季大会は結果的に3位でしたが、戦前は優勝候補に挙がっていました。春は県大会、東海大会ともに初優勝。投打にバランスが良く、力は確実にあると思います。米山学監督は大学野球・社会人野球の第一線で活躍している方で、堅実な野球をされているイメージがあります。

(結城)私も秋から加藤学園推しでした。ただ「夏の静岡大会で第1シードは勝てない」というジンクスがあるので、そこを破れるかどうか。これまで第1シードで優勝したのは浜松工業(浜工)と静岡(静高)、常葉大菊川(常菊)だけ。静岡県は107チームと参加校も多く、よほどずば抜けた力がなければ、なかなか春夏続けて勝つのは難しいとされています。

ー加藤学園の強みは?

(結城)加藤学園は戦力がそろい、攻守に隙がない印象です。投手陣は誰かが調子を落としても、次の新しい戦力がどんどん出てくる。選手は相当鍛えられていますね。守備は元々定評がありましたが、そこにプラスして「やっぱり打てなきゃ勝てない」っていうことで、米山監督はここ数年、打つことにも力を入れてきました。

安定感のある常葉大菊川は接戦に強い

秋季高校野球県大会で優勝し、喜ぶ常葉大菊川ナイン=2022年10月2日、草薙球場


ー常菊も昨年秋、今春と県4強入りで安定していますが…。

(吉沢)常菊は、センバツで投げた左の2年生久保綾哉のほかに3年生右腕が2人いて、打線も上位を中心に好打者が多いです。ただ、淡泊な攻撃になってしまう時があると石岡諒哉監督や平出奏翔主将が反省を口にしています。そのあたりの課題を克服できればチャンスは大いにありそうです。春から1年生の児玉一琉がスタメンで起用されるなど良い選手が出てきていて、下級生の活躍もポイントになりそうです。

(結城)名倉さんが担当していたセンバツ優勝時代のイケイケ野球とは、チームカラーが変わっているんですよね。今の石岡監督はセンバツ優勝した時のキャッチャーで、当時の超攻撃型野球を経験していますが、当時のカラーにはあまりこだわっていないようです。

今は堅実に守って勝つスタイル。緻密さもあり、本当に競り合いには強いです。でも、かつての「波に乗ったら止められない」みたいなイメージとは違います。なので、今のチームの強みを出せるかどうか。

(吉沢)今はバントも多いです。でも、当時の積極的な走塁はしっかり継承してる感じです。

ノーシード東海大翔洋、静清も力はある

ーダークホース的な存在は?

(結城)今年は強豪校が割と順当にシードに入ったと言われています。そこからこぼれたノーシードがどのブロックに入るかが注目されていました。ノーシードの中では東海大翔洋(翔洋)が、シード校から警戒されています。あとは、昨年準優勝の静清も優勝してもおかしくない戦力が整っています。

静清は昨年のメンバーが8人残っていて、長田仁志監督も「(準優勝した)昨年よりも戦力は上」ともおっしゃっていました。掛川西のポケットに入り、勝ち上がれば2回戦でぶつかります。

(吉沢)最近県大会の常連になりつつある天竜にも注目したいですね。初戦に昨秋4強の知徳、2回戦で日大三島とぶつかる厳しい組み合わせですが、どんな戦いをするか。

ー強豪校が初戦を突破すれば、2回戦は「掛川西ー静清」「常菊ー駿河総合」「常葉大橘ー静岡」「知徳ー日大三島」など好カードが多くなりそうですね。

(結城)今年は第1〜4シードがすべて私学でした。現場でもよく聞く話ですが、コロナが長引いた影響で公立校が苦しみました。練習が思うようにできていない印象で、私学と差があるような気がします。

ー伝統校の様子はいかがですか。

(結城)静高はピッチャー陣の出来次第でしょうか。2年生エースの中野桜佑のほかにも枚数はそろっています。あとは昨年の怪我から復帰した斎藤童獅がどの程度投げられるか。

(山本)静岡商業(静商)は今年は打撃はそこまでじゃないかもしれませんが、走塁や守り、小技を生かした伝統のスタイル、いわゆる「静商スタイル」をやると監督はおっしゃっていました。自分たちのペースに持ち込めば、17年ぶりの甲子園の可能性はあると思います。春は守備が乱れたので、かなり鍛え直しているようです。

(結城)静商、浜松商業、浜工などはコンスタントに上位を争ってほしいですね。

浜松開誠館は近藤ら好投手そろう

近藤愛斗(浜松開誠館)


ーほかのシード校は?

(吉沢)第4シードの浜松開誠館は県内ナンバーワンと言っていいような近藤愛斗という好投手がいて、最速は147キロ。ほかに2年生の松井隆聖、去年から投げている野手兼任の広崎蓮という両左腕がいます。ともにコントロールで勝負するタイプ。自滅するタイプではないので、試合をつくれます。

藤枝明誠は右の2枚看板がいます。右腕の牧野亮大が春に最速142キロを出したそうです。元々変化球が武器だったみたいですが、コントロールも上がってきて、さらに生きるようになった。もう1
人、4番ファーストで投手もやる寺下颯真も最近は146キロぐらいの球を投げた。光岡孝監督はこの2本柱でやっていく想定のようです。例年同様に守備も堅く、力はあるんじゃないかな。

(結城)藤枝明誠は牧野がいいので、今年は勝負を掛けていると思いますね。あとは2年連続4強入りしている掛川西も注目です。ここでもうワンステップ上に行けるか。

牧野亮大(藤枝明誠)


(名倉)掛川西はアベレージを保っている印象ですね。コンスタントに上位にいる印象です。

(吉沢)センバツは2009年に出ていますが、夏の甲子園に前回出たのは今の大石卓哉監督が高校生の時なんですよね。1998年の松坂世代。

(結城)コンスタントに上位にいるうちに甲子園に出たいよね。

ー第5シードの聖隷クリストファー(聖隷)はいかがですか。

(結城)コントロールよく試合を作るピッチャーが今年も複数枚います。

(名倉)聖隷と日大三島が同じブロックで注目ですね。秋も春も要所でずっと戦っている因縁の相手という印象があります。両チームとも甲子園に何度も導いている名将同士ですし、対戦が実現すれば興味深いですね。

<座談会参加記者の略歴>
▼吉沢光隆 2022年春から高校野球担当。静岡裾野リトルシニア出身。桐蔭学園高(神奈川県)ー法政大で内野手。
▼結城啓子 2004年夏〜2005年夏、2014年秋〜2022年春担当。現在は運動部長としてデスク業務をこなしながら中学野球からプロまで幅広く野球取材に関わる。
▼名倉正和 2006年夏〜2008年春担当。常葉菊川高のセンバツ優勝をキャップとして取材した。現在はサッカーのジュビロ磐田担当。
▼山本一真 2012年夏〜2014年夏担当。浜松西高野球部、千葉大野球部出身。ポジションは外野手。現在はパリ五輪担当。

静岡新聞社編集局運動部がサッカーや野球、バスケットボール、ラグビー、バレーボールなど、さまざまなスポーツの話題をお届けします。紙面では紹介しきれない選手たちの表情や、ちょっとしたこぼれ話をお楽しみに。最新情報は運動部の公式X(旧Twitter)でチェックを!

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