◇星陵「アメイジング・グレイス」
鬼たちが住む鬼ケ島の高校に転校したトモカ。桃太郎の襲来から210年後、鬼ケ島は人間の住む島と国交回復し、大使館設置を受け入れた。大使館員はトモカの父。「人間と鬼の架け橋になりたい」と願うトモカだが、鬼社会にはなかなか受け入れられない-。桃太郎伝説を被害の歴史として語る教育、属性の違いによる地域の分断、移民難民、迷惑施設の受け入れなど、現代社会のメタファーを多数織り込んでいた。◇磐田東「父と暮らせば~アイ」

あらゆる感情を失ったアイと父の物語。父はアイの回復を信じて、身も心も娘にささげる生活を送る。アイの感情を取り戻す手術の申し出があるが、その手術には「父親のことを忘れてしまう」というリスクがあった-。娘を喜ばせようと献身的に道化を演じる父親とアイの間に生じる寒々しい空気が、徐々に温まっていく様子が伝わった。身を捨てて娘の将来を願う父に対するアイのアクションには涙腺が緩んだ。
◇清水南「放送室物語」
静岡県舞台芸術センター(SPAC)の演目でもおなじみの泉鏡花「天守物語」を下敷きにした作品。高校文化祭で上演する演劇で重要な役に抜擢された主人公ミレが、葛藤を抱えながらも自分自身を見つめ直す。生演奏のパーカッションサウンドに乗せてテンポよく物語を進めた。「天守物語」を演じる劇中劇(稽古)で古典の香りを漂わせる一方、人気アニメの決めぜりふも配し、さまざまな時間軸を感じさせた。◇新居「会議のあとに」
昨年県大会初出場で優秀賞を得た同校。今年も「虚実皮膜」の演目を披露した。浜名湖近在の4高校から3人ずつが集まり、市役所旧館の古い会議室で討議を行う。議題の中には学校統合や部活動の地域移行など、現在進行形の教育の諸課題が見え隠れし、「結論ありき」で生徒に議論させる「大人のたくらみ」を看破する場面もあった。刺激的かつ笑える12人の密室会話劇。座組みは「十二人の怒れる男」へのオマージュか。◇伊豆伊東「唐揚満足の姉妹」

田舎町にある唐揚げが売りの弁当屋に生まれた三つ子の姉妹が、刺激し合い、ぶつかり合いながら成長していく物語。男で一人で娘たちを育てた父親、常連客のトラックドライバー、阪神大震災で家族を亡くしたアルバイトの女性が温かく3人を見守る。「帰れる場所」というかけがえのない存在の大きさを感じさせる一作。3人は平成元年生まれという設定で、劇中にハナレグミ、山崎まさよしなど平成の名曲多数。
◇浜松開誠館「Hot Spot」

県大会突破を目指す高校演劇部で演出を担当するみずきは、「最後の舞台かもしれない」という強い思いから、ひたすら作品の質の向上を目指す。ただ、仲間は必ずしも同じ熱量ではない。空回りするみずきに、親友のあおいは言う。「なんで一人になろうとするの」-。高校年代特有の情熱とエネルギーの急激な高まりと空回り。それを自覚した時のやるせなさと八方ふさがり。その出口がきちんと示され、後味が良かった。
◇三島南「受付番号#4771」

死者の魂が霊界に導かれるまでの待合室を舞台に、さまざまな事情で死に至った男女4人が会話を通じて生前の自分に向き合う。キャバ嬢、JK(女子高生)、カフェ店員、男性アイドルというまるで接点のない4人が、それぞれの死生観にうなずいたり反駁したり。過剰にフェミニンなキャバ嬢、25歳の割には老成した言動のアイドルなど、4人のキャラクターが極めて明瞭につくられていた。客席の反応も良かった。





































































