【第49回静岡県高校演劇研究大会2日目 】駿河総合、星陵、浜松聖星が関東大会進出

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は11月29~30日に三島市民文化会館で行われた2025年度静岡県高等学校総合文化祭演劇部門・第49回静岡県高校演劇研究大会の2日目(最終日)リポート。県東部、中部、西部の各地区から推薦された13校が出場し、2日目の30日は6校が上演した。選考の結果、来年1月に三島市などで開かれる関東高校演劇研究大会へは駿河総合、星陵、浜松聖星の出場が決まった。(文・写真=論説委員・橋爪充)

◇三島北「DOLL」

女子校の寮で出会った新入生5人。スカート丈の長い不良、引っ込み思案、優等生などタイプの異なる5人は、時に激しくぶつかりながらも互いに励まし合って青春を謳歌する。それぞれのエピソードがテンポよく語られるが、物語は悲劇的な結末へ向かう。重いテーマと高校生の日常が無理なく接続されていた。歩数までしっかり計算したと思われるスピーディーかつ規律正しい足の運びが印象的。

◇浜松市立「未完成」
アピール力に秀でたカリスマ的生徒会長久々塚依良は、ぐいぐいと学校改革に突き進む。時に生徒内から反発を受けながらも自分の力を信じて行動を緩めない。だが次第に、自分の状況が他律的ではないかと深く思い悩む。たくさんの人の期待に応えて生きてきたが、自分はもしや他人の「操り人形」ではないのか―。自己犠牲が生む悲劇をリアルに捉えたオリジナル脚本が冴えていた。


◇浜松聖星「パッション・ミッション・ディスカッション」

2075年、AIによるリモート授業が常識となった世界。修学旅行の説明会のため、久しぶりに学校に来た高校生5人。そんな彼らはいつの間にか、学校全体を使った謎解きゲームに参加する羽目に陥る。元気で明るい主人公女子、しっかり者の補佐役女子、少し皮肉めいた口調で諭す女子、無口な男子、小動物系の優柔不断女子という、キャラクターの描き分けが見事だった。


◇駿河総合「ヒトリダケノ」
学生服を着て公園を訪れる人々にエールを送る「一人応援団」の愛架(まなか)。二人だけで活動する演劇部、腹痛に悩むサラリーマン、通院帰りのおばあさん。皆、愛架のエールを受け入れ、元気を得るが、次第に疑問が湧いてくる。愛架はなぜ、一生懸命他人を応援するのか―。上演直後に演劇部員役の美しい側転が決まって客席が大きく沸いた。演目はこれで勢いに乗り、最後まで突っ走った。


◇富士見「ひかり/かげ」
竜の怒りを静めるための生け贄に選ばれてしまった巫女(みこ)のあじの話と、高校写真部で励まし合いながら作品を仕上げるあじことちひろの話。二つの物語がパラレルに進行し、いつしかその境目が見えづらくなっていく―。純文学やアート系映画を思わせるスタイリッシュかつ、美しい場面が続出。白のあじこと黒のちひろ、という衣装のモノクローム対比が非常に効果的だった。


◇浜松西「空白~アイの愛した世界~」

自分が何者かを知らない少女は、ナビゲートロボット「ナビ」から「世界を作らなくてはなりません」と命じられる。ここがどこなのか、世界を作るとは何を指すのか。ナビから「アイ」と名付けられた少女は、真っ白な世界に芸術で色を加えていく。美術、言葉、音楽―。それはまた、世界の崩壊の始まりでもあった―。観念的なテーマを美しい舞台セットで鮮やかに表現していた。

◆審査結果
最優秀賞 駿河総合「ヒトリダケノ」※関東大会出場
優秀賞 星陵「アメイジング・グレイス」※関東大会出場
    浜松聖星「パッション・ミッション・ディスカッション」※関東大会出場
    新居「会議のあとに」
    伊豆伊東「唐揚満足の姉妹」
    三島北「DOLL」
優良賞 磐田東、清水南、浜松開誠館、三島南、浜松市立、富士見、浜松西
創作脚本賞 浜松聖星浜松聖星「パッション・ミッション・ディスカッション」

静岡新聞の論説委員が、静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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