人形作家の宮崎郁子さんは、オーストリアの画家エゴン・シーレの絵画の人物をひとがた(人形)で表現する。樂土舎で11月1日に開かれた、神奈川県立近代美術館の前館長の美術評論家水沢勉さんとのトークで、その特異な創作コンセプトを丁寧に説明した。たいへん興味深い内容だった。
1995年、阪神大震災の年の秋にエゴン・シーレを知る。
「布製の人形を作っていたんですが、(関節部分を球体でつくる)立体関節人形を習い始めて。そうなると、体をまず作らなくてはならない。参考にするために女の人の裸の絵を探していたら、エゴン・シーレに出会いました。なんてすごい絵なんだろうと思った。恋に落ちたんですね」
当時、シーレは今ほど世間に知られていなかった。心をわしづかみされた宮崎さんは、シーレの絵を人形にしようと考え、試行錯誤を繰り返す。
「いくらやってもシーレのようにはつくれないけれど、(展覧会を)見に来る人は喜んでくれた。『シーレの引用だけでなく、あなたのものを作りなさい』と、さんざん言われたこともある。でも『自分のものを作る』ということを気にしたことがないんです」

30年間続けてこられた理由。それは、シーレや彼を取り巻く人々についての情報が徐々に集まってきたからだった。インターネットの情報充実も背中を押した。
「最初は彼の絵しか分からなかった。でも、洋書が入手できるようになって、いろんなことがいっぱい(自分の中に)入ってくるようになった」
特にシーレ作品のモデルであるヴァリー・ノイツィルの自立的な人生を知ったのは大きかった。彼女の人形を作るための強烈な動機づけになったという。
水沢さんいわく「彫刻はモニュメンタリーだが、人形は自然や環境、光や空気に応じて表情が変化する」。樂土舎に置かれた人形たちも、確かに光の加減で見え方が変わる。宮崎さんは「(展示環境は)今までで一番いい。本当にきれいで驚いた」と会場を称賛した。
(は)
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■「宮崎郁子作品展 HITOGATAの夢 エゴン・シーレへのオマージュ」
会場:樂土舎(袋井市豊沢227)
開場日時:11月16日(日)までの月、金、土、日曜。午前11時~午後4時半
観覧料金:一般500円、大学生以下200円、小学生以下無料






































































