<プロ野球2軍・くふうハヤテ>鈴木将平(元西武) NPB復帰へ「圧倒的な結果を」 不利な条件、乗り越える覚悟

プロ野球2軍ウエスタンリーグ・くふうハヤテベンチャーズ静岡の鈴木将平外野手(27)=静岡高出、元西武=がNPB12球団への復帰を目指して奮闘を続けている。

7月5日の阪神戦では5打数5安打で打率を一時、3割に乗せた。「自分のようなタイプは結果が圧倒的じゃないといけない。3割3分。それを打つためには3割5分を意識しないと」。7月31日の移籍期限を前に、はやる気持ちを抑えながら1打席1打席に向き合う。

フライボール革命の中で

2016年のドラフト4位で西武に入団。折しも、米国メジャーリーグでは「フライボール革命」がもてはやされ、ゴロよりもアッパー気味のスイングで角度を付けた打球を打つことが推奨される時代が到来した。

NPBもその影響を受けて、よりパンチ力のあるホームランバッターが求められるようになった。ヒットゾーンを狙って低く鋭い打球を飛ばすことを得意としてきた鈴木選手のような打者が生きる道は険しくなり、8年目の昨季終了後に戦力外通告を受けた。

求められるのは1発

「俊足巧打タイプは圧倒的な数字を残さなきゃいけなくなっている。ピッチャーのレベルも確実に上がり、コツコツじゃ点が取れない。試合が動くような1発が求められているというのは感じていました。かつては勝ちパターン、負けパターンがはっきりしていたけれど、今はそれがない。負けパターンでも出てくる若い投手がすごい。完成されてなかったとしても、球が速かったり。そういう時代になってますね」

パワーを付けようと、オフシーズンに体を大きくした年もあった。「打球はあまり変わらなかったですね。モデルチェンジは効かなかった。ただ、やってみたので後悔はないです。引っ張れるようにもなりましたし」

レベルの高い定位置争い

今年の西武で外野を固める西川愛也選手、長谷川信哉選手、渡部聖弥選手については「身体能力はピカイチです。西川は球際に強いしスター性がある。ハセシンも飛ばすのエグいです。練習で最上段に飛ばすし、足ももちろん速い。渡部も振りまけないし変化球にも合わせられるし、いい選手ですね」と客観的かつ冷静に評価する。

西武の元同僚でライバルだった愛斗選手(ロッテ)や若林楽人選手(巨人)、川越誠司選手(中日)ら移籍していった顔ぶれを見ても、いかにレベルの高い定位置争いを戦ってきたかが分かる。

頼みはネット動画

今の環境で打率、結果を追求するのは至難の業だが、このスタイルを貫く以上、「やるしかない」。

NPB12球団のように、相手投手の緻密なデータが事前に用意されているわけではない。頼りにするのは一般の野球ファンと同じように、YouTubeや動画配信サービス。ただ、動画は投手の背中からの撮影に限られるため、参考程度にしかならない。基本は打席の中で、相手と対峙(たいじ)しながら攻略を試みるしかない。

「例えば(17日に先発した阪神の)門別(啓人)投手は多分、緩いスライダーと決めに来るスライダーと投げ分けているんだと思います。そういうところも事前に分かればいいのだけれど、打席レベルの話になる。映像を探すのも一苦労です。YouTubeはたいてい抑えている場面ばかりで、打たれている映像はないですし(笑)」

体力、気力をそがれても

くふうハヤテに専用のトレーニング施設はなく、試合は屋外でのデーゲームが基本。月曜日のバス移動も「大阪5時間のバスは余裕になりました」と笑うが、体力、気力はそがれていく。

それでも「好きなことを仕事にできているだけでいい。立ち上げたばかりのチームに携われるのも面白いですよ」と前向きに努めている。

チーム内では元DeNAの倉本寿彦選手らベテラン勢の姿勢にも刺激を受けている。「試合後に守備練習して打ち込んで、(選手の中で)最後くらいに帰る。タフですね」。自身も後輩を導く存在にならなければ、と思う。

来るべき日に備えて

静岡高で1学年上の先輩、堀内謙伍捕手が今季、楽天入団10年目にして開花し、正捕手の座をつかもうとしている。

「ここ3年間毎年、シーズン最後の試合で会う度に、堀内さんから『お世話になりました。ありがとう』って言われて握手してたんですよ。戦力外になるからって。実際には自分が先でしたが」

鈴木選手にもこの先、どんな巡り合わせがあるか分からない。来るべき日に備えて、地道にバットを振り続ける。
(編集局ニュースセンター・結城啓子)


【取材後記】
くふうハヤテ2年目で、鈴木選手と同じ静岡高出身の池谷蒼大投手(元DeNA)も7月末の移籍期限を意識する一人です。
最近は140キロ台後半をコンスタントにマークするなど、「出力は出ているし、変化球も良くなっている」と話します。

7月17日の阪神戦では〝直球破壊王子〟の異名を取る渡邉諒選手を空振り三振に仕留めるなどアピールに成功。今季は投球の間合いに余裕をもたせ「流れでいかないように、呼吸を整えて1球1球に集中して投げるようにしている」とのこと。

球団のイベントに積極的に参加するなど、静岡の野球界を盛り上げる役目を果たしつつ、「プロのチームと対戦できる幸せを身に染みて感じています」と表情は明るかったです。
シズサカ シズサカ

静岡新聞SBS有志による、”完全個人発信型コンテンツ”。既存の新聞・テレビ・ラジオでは報道しないネタから、偏愛する◯◯の話まで、ノンジャンルで取り上げます。読んでおくと、いつか何かの役に立つ……かも、しれません。お暇つぶしにどうぞ!

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