
これはユニークな展覧会だ。とある故人の追悼展が、毎年1回の定期展として定着している。その間、メンバーを緩やかに入れ替わっている。個展でも、グループ展でも、公募展でもない。故人のイニシャルのもとに、腕に覚えのある画家が作品を持ち寄っている。樹木葬の後、大木の根元にいくつもの花が咲いた光景を思い浮かべる。
もともとは2011年に亡くなった画家大石勝広さん(藤枝市)をしのんで、生前の大石さんと親しかった画家グループが2017年に始めた。「K展」の「K」は、大石さんのファーストネームから取っている。
かつて静岡新聞の月1回の連載「鎌倉だより」(三木卓さん執筆)の挿絵を担当していた松井正之さん(静岡市清水区)が中心となり、回を重ねた。新型コロナウイルス禍で中止した2020年以外はだいたいこの時期に。油彩画や水彩画の新作を複数持ち寄る。
興味深いのは立ち上げメンバーの中にも複数亡くなった方がいて、入れ替わるようにして新しいメンバーが加わっていることだ。展覧会自体、根無し草のような存在だったはずだが、フェードアウトしていない。定期開催を続けている。

吉田さんはオレンジ色を基調にした画面に古代のイメージを託した。池谷さんはそれぞれを右手、左手で仕上げた二つの抽象画をものにした。2人は「力のある方ばかりだから緊張する」と声をそろえる。

会場正面には、いかにも松井さんらしい抑えた色調の動物画が3点。黒の下地に色を重ね、ウサギ、カラスの側面を描く。「松井構図」とも言いたくなる静的な画面構成。生きるものへの慈しみがにじみ出る。
藤ケ谷さん、大石節雄さん、大畑達郎さんの作品も含め、奥行きのある展示会場が「絵を描く喜び」に満ちている。
(は)
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■第8回「K展」
会場:アートカゲヤマ画廊
住所:藤枝市小石川町4-10-28
開廊:午前10時~午後7時
会期:6月15日(日)まで
