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論説委員しずおか文化談話室

【静岡県立美術館の「無言館と、かつてありし信濃デッサン館―窪島誠一郎の眼」展】 夭逝の画家、戦没画学生の作品が訴えるもの。そして主題はもう一つ

静岡新聞論説委員がお届けするアート&カルチャーに関するコラム。今回は静岡市駿河区の静岡県立美術館で10月12日に開幕した企画展「無言館と、かつてありし信濃デッサン館―窪島誠一郎の眼」から。

1979年、長野県上田市に開館した「信濃デッサン館」は若くしてこの世を去った画家のデッサンを集めた異色の美術館だった。2018年にいったん閉館し、2年後にコレクションの端緒となった画家村山槐多の名を冠したKAITA EPITAPH残照館として再開した。

1997年、同じ上田市に「戦没画学生慰霊美術館」を名乗る「無言館」がオープンした。全国から戦争で亡くなった画学生の絵が集まっている。

この二つの美術館をつくったのが窪島誠一郎さん。東京で小劇場「キッド・アイラック・ホール」や画廊「キッド・アイラック・コレクシォン・ギャルリィ」を開設し、画商としても活動した人物だ。

この展覧会の会場で目に入るものは、「夭折の画家の作品」「出征する直前の画学生の作品」であるし、作品の力や彼らと戦争にまつわるエピソードに対して深い感動を覚える。だが、本当のテーマは一人で二つの美術館を立ち上げた窪島誠一郎さんという人物そのものだ。

この展覧会は静岡県立美術館の木下直之館長肝いりと聞く。事実、各章の扉の文章をつづっているのは、木下館長自身である。そんな館長が、本展カタログで窪島さんの歩みを書いている。私設美術館を二つも抱えるに至ったいきさつが、克明に描かれる。本展の「核」は、実のところこの論考に尽きるのではないか。

6月、無言館が学校法人立命館と連携することが報じられた。窪島さんとの共同館主に、文筆家の内田也哉子さんが就任することも決まった。美術館、特に私立美術館の持続可能性について議論される昨今、「遺品」を作品として預かる無言館の活動は、これからも注目に値する。(は)

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■静岡県立美術館 
住所:静岡市駿河区谷田53-2
開館:午前10時~午後5時半(月曜休館、祝日の場合は翌日休館)
企画展料金(当日):1200円、70歳以上600円、大学生以下無料
会期:12月15日まで

静岡新聞の論説委員が、静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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