サッカージャーナリスト河治良幸
J1復帰のジュビロ磐田、王者神戸との開幕戦で確認しておきたい3つのポイント!
2年ぶりのJ1挑戦となるジュビロ磐田は開幕節で、ヤマハスタジアムにヴィッセル神戸を迎える。昨シーズン悲願の初優勝を果たした神戸を相手に、磐田がどう戦っていくのか。もちろんホームで勝ち点3を狙うはずだが、3つのテーマから開幕戦を展望したい。
①ベースと神戸対策
就任2年目となる横内昭展監督はJ1の舞台でも、基本的には昨年と変わらない戦い方で挑んでいくことを主張している。つまりは自分たちからボールを動かして主導権を握り、守備では高い位置からボールを奪いにいくアグレッシブなスタイルだ。これは藤田俊哉スポーツダイレクターも磐田が目指していくサッカーとしてコンセプトに掲げている。ただ、現時点でJ1王者の神戸が自力で勝ることは間違いないだろう。昨年7月の天皇杯では真っ向から挑んで、磐田は2−5で敗れた。お互いリーグ戦の主力と準主力が混成されたメンバーだったが、鹿沼直生は「半分ぐらい入れ替わっても、あの強度でやってくるというのはイメージできて。前半0-3という悔しい思いもした」と振り返る。
現時点のベストメンバーで来ると予想される神戸に対して、磐田としては自分たちの戦い方を押し出すところと神戸の強みを消していくところ。ここのバランスをどう考えて、横内監督が選手たちを送り出すのか。
②新戦力と既存戦力の融合
昨年はFIFAの裁定による補強禁止で、新戦力がユースから昇格の後藤啓介とレンタルバックの4人のみだった。その分、J1の戦いに向けて今年は15人の選手が加入した。ブラジル人の大型FWマテウス・ペイショットや昨年J2ベスト11の平川怜など、期待のタレントが揃っているが、横内監督は「新しく入ってきた選手は間違いなくギラギラしてますけど、既存の選手が間違いなくギラギラを出してくれている。これは本当に去年と違う」と語っている。
特に新加入選手と既存戦力によるスタメン争いが加熱しそうなのが、元日本代表のGK川島永嗣が加入したGK、そしてブラジル人MFレオ・ゴメスや福岡でルヴァン杯の優勝に貢献した中村駿など、複数の実力者が加わったボランチだ。
GKは神戸から期限付き移籍してきた坪井湧也が、契約の規定により神戸との開幕戦に出られないが、川島と昨年の守護神だった三浦龍輝がハイレベルなポジション争いを繰り広げている。
ボランチは主力としてJ1昇格を支えた上原力也や鹿沼直生が健在で、守備能力の高いレオ・ゴメス、豊富な運動量と正確なキックを兼ね備える中村と、誰が開幕スタメンを掴んでもおかしくない。
アカデミーからの生え抜きである藤原健介も、現役引退した大津祐樹氏から77番を受け継いでおり、ポジション奪取に強い気持ちを見せている。また平川もブレイクした熊本では”10番ポジション”と呼ばれるトップ下だったが、新天地ではボランチにも意欲を見せている。
③ベンチメンバーの構成
スタメンはもちろん注目だが、開幕戦のベンチメンバーをどう構成するかで、横内監督のプランが見えてくるはず。ベンチの選手たちをサブというより、クローザーとして考える指揮官は昨シーズンは7人のベンチメンバーのうち、攻撃的なカードを多く入れる傾向があった。開幕戦はホームとはいえ、神戸を相手に勝ち点1を獲得できれば悪い結果ではない。横内監督は積極的だが、現実を見ないロマンチストではない。例えば後半30分を過ぎて同点、神戸が勝ち越すゴールを奪いにくる状況で、交代カードで危険なところを抑えながら、カウンターから少ないチャンスをものにするという戦い方にシフトすることも可能だ。ベンチメンバーは、そうしたプランを想定する大きなヒントになるのだ。
アタッカーは新戦力を含めて充実している。マテウス・ペイショットが1トップでスタメン起用されれば、昨シーズン9得点のジャーメイン良をジョーカーとして残せる。韓国のKリーグから”逆輸入”で来た石田雅俊、ブラジル産ドリブラーのブルーノ・ジョゼなど、攻撃のタレントをできるだけ多く揃えるのか、ボランチやディフェンスの選手を多めにして、終盤のクロージングに備えるのか。対神戸というだけでなく、シーズンの戦い方のヒントになりそうだ。
<河治良幸>
タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。 サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。著書は「ジャイアントキリングはキセキじゃない」(東邦出版)「勝負のスイッチ」(白夜書房)「解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る」(内外出版社)など。
タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。