必勝のホーム札幌戦。ジュビロ磐田の救世主となる選手たち

サッカージャーナリスト河治良幸

【サッカージャーナリスト・河治良幸】
ジュビロ磐田はホームのベガルタ仙台戦、アウエーのロアッソ熊本戦と連敗を喫し、J2の8位に後退した。首位の水戸ホーリーホックとか勝ち点差が10まで開き、2位の仙台とも勝ち点差5となっている。週末には9位の北海道コンサドーレをヤマハスタジアムに迎え撃つが、J2優勝や自動昇格を果たすために、ここで今シーズン二度目となる三連敗は許されない。

ジョン・ハッチンソン監督は熊本戦後、11試合ぶりの勝利を果たしたホームチームにリスペクトを表しながらも「しっかりと振り返って、このクラブで誰がプレーして闘えるのか、闘おうとするのかをしっかりと見つめ直したい」と厳しい表情で語った。熊本戦からスタメンの変更もありそうな札幌戦だが、この苦境からチームを救う勝利の担い手は誰になるのか。

一人目は、ここまで23試合で22試合にスタメン起用されている倍井謙


一人目は倍井謙だ。ここまで23試合で22試合にスタメン起用されており、5得点2アシスト。ハッチンソン監督の信頼は厚いが、ここ4試合は得点がなく、熊本戦でも勝利をもたらすゴールやアシストを記録することはできなかった。倍井は「難しいところはありましたけど、こういう試合で自分が1点もぎ取れると、そこで流れがガラッと変わったりとか、今日の結果が勝利になっていたかもしれない。そういうところは自分にベクトルを向けて考えたい」と厳しい表情で語った。

その倍井は5月6日に行われたアウエーの札幌戦で、先制点を含む2得点を決めて、リーグ戦7試合ぶりとなる勝利のヒーローになった。「もう1回、自分たちのサッカーはどういうものなのかに立ち返って。熊本まで来てくださったサポーターをがっかりさせてしまったので、次は笑顔で帰ってもらうように」と気持ちを新たにしている。

磐田は夏の追加登録期間にブラジル・セリエAのヴィトーリアからグスタボ・シルバを獲得。右ウイングを主戦場としてきたが、左ウイングからのカットインも得意としており、倍井にも大きな刺激になりうる。次の札幌戦で倍井が結果を残すことは、ハイレベルなライバルとのポジション競争を見越しても大きい。

二人目は、ようやく実戦復帰した植村洋斗


二人目は植村洋斗だ。大卒ルーキーだった昨シーズンは右サイドバックとして奮闘したが、勝負の年目はボランチで勝負したい意志を明確にしている。その希望はジョン・ハッチンソン監督にも伝えていると言うが、序盤戦で川口尚紀を欠いたチーム事情もあり、リーグ戦の出場チャンスは全て右サイドバックだった。そこからボランチの主力を担う中村駿がルヴァン杯・湘南戦の怪我で離脱、レオ・ゴメスがJ1の京都サンガに移籍とボランチの層が薄くなる中で、植村本人もいよいよ出番かという矢先に、右太ももの裏を負傷してしまった。

6月28日のベガルタ仙台戦で久々のベンチ入り。6月29日に行われた藤枝MYFCとのトレーニングマッチで、ようやく実戦復帰した植村は「コンディションは上がってきて、ボランチの感覚も徐々に戻ってはきている」と語っている。アウエーのロアッソ熊本戦もベンチに入ったが、出番なくベンチで、屈辱的な連敗を目の当たりにすることとなった。

熊本戦はアウェーの厳しい環境と言っても、相手のプレスをうまく回避できずに、中盤から上手く前にボールを運べず、ボランチの金子大毅や上原力也による飛び出しも、ほぼ不発に終わってしまった。植村は「攻撃のところはあの二人より自分がいい部分を出せると思うので。そこは自分がもっともっと出して行かなきゃなと思います。ボールを持って違いを出せる選手だと思ってるので、そこで圧倒して行かないといけない」と語る。ハッチンソン監督も「洋斗が復帰することで、あのポジション(ボランチ)に競争が生まれてくる」と期待を表しており、札幌戦でチャンスをもらうことができれば、多様な働きでチームに貢献できるはず。

三人目は、仙台戦でアクシデントに見舞われた江﨑巧朗


三人目は江﨑巧朗だ。仙台戦の途中にアクシデントで交代。古巣であるアウエーの熊本戦も、リーグ戦では初めてベンチから外れた。ただ、ハッチンソン監督は大きな怪我ではないという見解を示しており、札幌戦での復帰が期待される。仙台戦の途中から、江﨑に代わり右センターバックに入ったヤン・ファンデンベルフもクオリティの高いプレーを見せたが、最終ラインに江﨑がいるかいないかで、ラインコントロールやビルドアップに大きな違いが出る。4バックはもちろん、最近のオプションになって来ている3バックを使う場合もキーマンになって来そうだ。

そのほか、J1のサンフレッチェ広島から加入したMF井上潮音が、いきなりピッチに立って、中盤からのビルドアップやチャンスメイクで違いを見せるか。熊本戦で初めてベンチ入りした新加入のタイ代表FWポラメート・アーウィライ、惨敗に終わった熊本戦で終盤に可能性のあるプレーを見せた18歳のMF川合徳孟などが攻撃面を活性化することを期待したい。怪我から本格的に復帰してきたMF相田勇樹がここからどう競争に食い込んでくるか。

札幌戦を終えれば、8月2日のホーム秋田戦まで3週間も試合がなく、その間に戦術面のアップデートやグスタボ・シルバなど新戦力のフィットも進められるが、札幌戦を勝利で終えられるかどうかで大きく違ってくる。三連敗を阻止するために負けられないと言うより、絶対的に勝ち点3をとっていかなければいけない試合だ。
シズサカ シズサカ

タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。

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