語り:春風亭昇太

静岡市役所 市長室にかけられている「彰往考来」(しょうおうこうらい)の書。
これは、16代徳川家当主であり、静岡藩知事となった、徳川家達(いえさと)によって書かれたものです。「彰往考来」とは、中国の古典に出てくる言葉で、「過去を明らかにして 未来を考える」ことを意味しています。
この言葉を理念として掲げる静岡市歴史博物館が、令和4年7月23日にプレオープンを迎えました。静岡で育まれた、貴重な歴史の価値と魅力を発信する拠点となるこのミュージアムの1階に展示されるのが「戦国時代末期の道と石垣の遺構」です。
この遺構は、歴史博物館の建設に伴う発掘で、旧青葉小学校跡地から見つかったもので、当時の姿がそのまま残された大変貴重な文化財です。幅およそ2.7メートルの道の両脇に、30メートルほどにわたって続く石垣は、戦国時代末期、天正時代の技法で、自然の石を組み合わせて積む「野面積み(のづらづみ)」で造られ、後ろ側に裏込めとして、川原石が詰められています。
この道の両側には武家屋敷があったとみられ、家康が駿府にいた頃の町のたたずまいをうかがい知ることができます。歴史博物館は、当初の設計を変更し、この貴重な遺構がそのままのかたちで展示されることになりました。
「彰往考来」の書は、市役所から「過去を明らかにし、未来を考える」にふさわしいこの場所に移され、静岡の歴史を見守っていきます。
静岡市歴史めぐり まち噺し 今日のお噺しはこれにて。